電気自動車(EV)への移行が加速する中、自動車部品サプライヤーはかつてない変革を迫られている。エンジンやトランスミッションなど内燃機関に依存してきた部品メーカーは、EV化による需要減少に直面し、新たなビジネスモデルへの転換を余儀なくされている。
エンジン部品需要の激減
日本自動車部品工業会の調査によると、2030年にはエンジン関連部品の市場規模が2020年比で約40%縮小すると予測される。特に、ピストンやバルブ、燃料噴射装置など内燃機関に特化した部品メーカーは、主力製品の需要が半減する可能性がある。
ある大手部品メーカーの幹部は「エンジン部品だけで事業を続けるのは不可能だ。EV向け部品へのシフトが急務だが、技術的にも設備的にも大きな投資が必要で、中小企業には厳しい」と語る。
EV部品への転換と課題
一方で、EV化は新たな需要も生み出している。モーター、インバーター、バッテリー関連部品、冷却システムなど、EV特有の部品市場が拡大している。しかし、これらの分野は電機メーカーや新興企業との競争が激しく、従来の自動車部品メーカーが優位性を発揮できるとは限らない。
経済産業省の報告書では、EV部品の国内市場は2035年までに約5兆円に成長すると試算されるが、そのうち約3割は海外企業が占めると見られる。日本のサプライヤーは、技術力と品質で差別化を図る必要がある。
中小サプライヤーの苦境
特に懸念されるのは、中小サプライヤーの存続である。大手自動車メーカーの下請けとしてエンジン部品を専門に生産してきた企業は、EV化への対応が遅れれば、受注減少により経営危機に陥るリスクがある。ある中小部品メーカーの社長は「これまでエンジン部品一筋でやってきたが、EVになると注文が激減する。新しい技術を導入する資金も人材も不足している」と嘆く。
業界団体は、政府に対し中小企業向けの支援策拡充を求めている。具体的には、EV部品開発への補助金や、技術転換のための人材育成プログラムの強化などが挙げられる。
自動車メーカーとの関係変化
EVシフトは、自動車メーカーと部品サプライヤーの関係も変えつつある。EVでは部品点数が内燃機関車の約3分の1に減少するため、サプライヤー間の競争が激化し、価格競争が起こりやすい。また、自動車メーカーがバッテリーやモーターを内製化する動きもあり、サプライヤーの役割が縮小する可能性もある。
日産自動車のEV戦略責任者は「サプライヤーには、単なる部品供給ではなく、システム全体の最適化提案が求められる。従来の部品単位の取引から、機能単位の協業へと変化していく」と指摘する。
生き残りへの道筋
こうした中、サプライヤーの生き残り戦略は多様化している。一部の大手は、EV向けの統合モジュールを開発し、自動車メーカーにワンストップで提供するビジネスモデルに転換。また、異業種との連携を進め、車載ソフトウェアや充電インフラ事業に参入する動きも見られる。
中小企業では、特定のEV部品に特化してニッチ市場を狙う戦略が有効とされる。例えば、EV用の高効率冷却システムや軽量化素材など、技術的に高い付加価値を持つ部品に集中するケースだ。
業界アナリストは「EVシフトは自動車産業のサプライチェーンを根本から変える。生き残るためには、従来の延長線上ではない発想の転換が必要だ。特に、技術開発力とコスト競争力の両立が鍵となる」と分析する。
政府も支援策を打ち出しており、2024年度補正予算では、サプライヤーのEV対応を促進するための基金を設立。技術開発や設備投資に対する補助金を拡充する方針だ。
しかし、時間は限られている。2030年までに主要市場でEVの販売比率が30%を超えるとの予測もあり、サプライヤーは迅速な対応を迫られている。業界全体として、EVシフトをチャンスと捉え、新たな価値創造に挑戦できるかどうかが、今後の成長を左右する。



