信金と日本IBMが地域DXで新構想「キャッスルタウン」、品川区と連携し2027年3月開設へ
信金と日本IBMが地域DX「キャッスルタウン」構想を発表

東京信用金庫は日本IBMと組み、品川区と協力して地域DX(デジタルトランスフォーメーション)に新たな取り組みを始めた。第一弾として、住民や地域事業者、行政をつなぐ新しいWebコミュニティサイト「キャッスルタウン」(仮称)の構想を発表した。本格的なオープンは2027年3月を目指す。

「単なる新サイトではない」、地域の課題解決を目指す

東京信用金庫の柳井理事長は、2026年9月4日に開いた発表会見で「われわれが本日発表するのは、単なる新たなWebサイトの立ち上げの話ではない」と述べた。会見には、連携した日本IBMの嶋根常務執行役員、来賓として品川区の須貝区長が登壇した。

キャッスルタウン構想は「地域活性化を目的に信用金庫の強みである地域密着型のネットワークを新たにWebという場に移行し、『街』というキーワードでカジュアルに近隣同士をつなぐ場を提供するコミュニティ創生の取り組み」で、「近隣同士、近隣と行政とのネットワークをつなぐことで新たなコミュニケーションおよびビジネスの創生を図る」という。

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分散する情報を届け、地域の課題を解決

柳井理事長は「キャッスルタウンは、地域にある情報、街の魅力、人と人とのつながり、そして支え合う力をつなぎ直し、地域の皆さまの暮らしをより便利に、安心に、豊かにするための地域コミュニティのプラットフォームをつくる構想だ」と説明。そのコンセプトは「つながる つくる わたしたちのまち」で、「地域の未来を誰かに任せるのではなく、住民の皆さま、地域事業者の皆さま、行政、そして私たち地域金融機関がつながり、共に考え、共につくっていくという想いをこのコンセプトに込めている」と語った。

「地域には暮らしに役立つ行政情報、魅力のあるお店や企業、心温まる地域活動など、多くの価値がある。しかし、そうした情報は分散し、必要とする人たちに十分に届いていないことがある。受け取れる補助金や助成金があることを知らなかったり、地域のイベントや身近なお店の魅力に気付かなかったり、離れて暮らす家族が高い親御さんを心配し続けているといったことが起こり得る。キャッスルタウンはこうした日々のお困りごとに寄り添い、人と情報をつなぐことで地域の課題解決につなげようという取り組みだ」と述べた。

品川区との連携協定を活用、2027年3月オープンへ

第一弾の取り組みとしては、品川区と2024年6月に結んだ包括連携協定を活用し、区政情報をはじめ、地域の安心・安全や生活に密着した情報の発信を進める構えだ。サイトの本格的なオープンは2027年3月をメドとしている。

柳井理事長は「キャッスルタウンは情報を一方的にお届けするのではなく、地域の皆さまが参加し、交流し、共に街をつくる。その中から地域の賑わい、新たなサービスやビジネスの芽を生み出していきたいと考えている」と、インタラクティブな場であることを強調した。

その上で「信用金庫の使命は、地域経済の活性化に貢献することだ。東京信用金庫は長年培ってきた地域との信頼関係や地域に根差したネットワークと、日本IBMが有する技術や知見を組み合わせることで便利で安心して利用でき、人の温かさが感じられる地域の社会基盤をつくる。もちろん、最初からすべてが整うわけではないが、まずは品川区での活動から一歩を踏み出し、利用される皆さまの声をうかがいながら、必要な機能やサービスを形にしていく。また、つくって終わりではなく、地域の皆さまと共に改善し、育てていく。そして、将来は品川区で生まれたこの仕組みを他の地域にも広げたいと考えている」と述べた。

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柳井理事長とともに会見に臨んだ日本IBMの嶋根氏は「日本IBMはこれまで、東京信用金庫といろいろ取り組んできた。今回のキャッスルタウンについては、早くから柳井理事長の熱い想いを聞き、当社の技術や知見をお役立てできるのではないかと思い、連携を進めてきた。ただし、技術はあくまでも目的を達成するための手段だ。今回の目的は新たなサイトを通じて地域住民の方々のつながりのハブとなり、いろいろなコミュニケーションやお困りごとを解決することにある。この目的に向けて、当社の技術や知見を適用していくことで、この取り組みを効果的かつ利便性が高く、広範囲に拡張できるように尽力したい」と述べた。

来賓として登壇した品川区の須貝区長も「東京信用金庫と品川区は、包括連携協定に基づいて多岐にわたる分野でさまざまな活動を実施してきた。今回のキャッスルタウンについても区のさまざまな行政情報の掲載や地域の多様な魅力を発信するということで、区としても大いに期待を寄せている」と、新たな取り組みへの期待を述べた。

地域金融機関のデジタルトランスフォーメーションへの挑戦

では、柳井理事長が冒頭で、キャッスルタウンが「単なる新たなWebサイトの立ち上げの話ではない」と述べた意味はどういうことか。同氏が説明したように「地域コミュニティのプラットフォーム」ということだろうが、東京信用金庫と日本IBMの狙いはもっと先を見据えているのではないだろうか。

そのキーワードとなるのは、現実と仮想の空間を使ってデジタル化を進める「デジタルツイン」だというのが、筆者の見立てだ。東京信用金庫にとってキャッスルタウンはデジタルツインの実現に向けたアクションであり、それは同金庫そのもののデジタル化を意味する。その構想をITベンダーとして支援する日本IBMは、キャッスルタウンの成功を足掛かりに同金庫と共に「地域金融機関のデジタルツインの取り組み」を「他の地域金融機関×他の自治体」へ広げていこうという思惑があるのではないか。デジタルツインではこれまで得られなかったさまざまなデータを入手できることから、それらを基にAIを活用すればさらなる効果も期待できる。

地域金融機関は、人口減少や少子高齢化などの社会構造の変化も相まって地域経済が停滞し、従来の事業モデルでは立ちいかなくなってきている。これからどうすれば存在感を発揮できるのか。今回の東京信用金庫の取り組みは、その答えを探すチャレンジともいえるだろう。