東北太平洋沿岸を縦断する自然歩道「みちのく潮風トレイル」は近年、国内外のハイカーから人気を集めている。昨年度は全線で延べ13万人以上が来訪し、三陸の壮大な自然を堪能した。こうした中、沿線の地域ではトレイルを通じた交流や情報発信が広がりを見せつつある。
フランス出身の移住者がPR動画制作
浄土ヶ浜やローソク岩、潮吹穴――。フランス出身のジュリアン・バレストさん(29)は今春、宮古市を巡る約8キロのトレイルを歩き、その荘厳な景色に目を奪われた。「自分が知るフランスは平らな場所が多い。海や迫力のある岩が新鮮で美しい」と話す。
バレストさんは市の自然や文化に魅せられ、3月に移住してきた。大学院で映像制作を学び、フリーランスで活動していたバレストさん。現在は市地域おこし協力隊員として働き、宮古市のPR動画の編集やイベントのポスター制作などを手がけている。
休日には趣味でトレイルを歩き、市内の重茂半島にある上級者向けコースにも挑戦した。歩いた様子は市のユーチューブチャンネルで公開しており、市内の全コースを歩くのが目標という。バレストさんは「トレイルを歩きたいと思っている人が、コースの見所を知れるような動画を作りたい」と意気込む。
スポーツ店が歩いた情報を発信
米国やドイツ、オーストラリアにトルコ――。外国人ハイカーがこぞって訪れる店がある。部活動用品などを扱う宮古市のスポーツ店「志賀スポーツ」だ。
店主の志賀鉄太郎さん(54)は、「知らなかった地元の良さを再発見できた」と2017年から店の定休日などに少しずつコースを歩くようになった。7年かけて約1000キロに及ぶ全線を踏破した。
コースの情報をフェイスブックなどで発信するうちに、店に立ち寄る外国人ハイカーが増えた。「英語は大の苦手」だが、翻訳アプリを使って要望を聞き、持ち運びできるコンロやトレッキングシューズなどの商品を充実させた。
コース上の自動販売機の場所など「歩いたからこそ分かる情報」を教えるという志賀さん。「知らない土地に来る不安を解消して、楽しく歩いてもらいたい」。おもてなしはこれからも続けるつもりだ。
海外メディアも注目
ネット上に外国人向けのトレイルの情報が多く見つかる。数万人のフォロワーがいる外国人がインスタグラムでトレイルを歩いた体験談を発信したり、英BBCや米紙ウォール・ストリート・ジャーナルが取り上げたりしており、京都や東京と違った日本の旅先の一つとして紹介されている。
2024、25年度の推計では、年間延べ約13万人がトレイルの一部を利用し、昨年、地図は海外で1000冊超売れた。主な海外市場は、北米、オセアニア、欧州といい、浄土ヶ浜ビジターセンターの佐々木洋介事務局長は「海を見ながら歩けるトレイルは海外でも評価されている。引き続き整備などで、その価値を維持していきたい」と話している。