離職率83%から逆転、非IT社長がYouTubeで独学→自作アプリでかなえた介護現場DX
離職率83%から逆転、非IT社長が独学で介護DX

北海道北見市で介護ステーションを運営するプーラビダは、離職率83.3%、約1200万円の赤字という危機に直面していた。人手不足により経営は悪化の一途をたどっていたが、非IT人材である代表取締役の宮﨑広大氏が自らYouTubeでプログラミングを学び、介護現場の業務効率化ツールを開発。離職率を7.7%まで低下させ、営業利益率10%超を2年連続で達成するまでに回復した。

離職率83.3%、赤字1200万円の現場

プーラビダが危機に陥ったのは2023年ごろ。約1200万円の赤字を抱え、経営状態は厳しかった。宮﨑氏は振り返る。「原因は、介護士1人当たりの訪問件数(稼働)の少なさでした」。職場の士気は低く、介護士1人当たりの1日の訪問件数は2件ほどだった。

訪問介護は訪問数が売上高に直結する仕事だ。宮﨑氏によると、一般的な訪問介護ステーションにおける1人当たりの稼働件数は1日4件程度。2件では利益を生み出せないという。

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業界特有の課題もあった。一つが「人員確保の壁」だ。訪問介護ステーションを開設・運営するには、介護職員を常勤換算で2.5人以上置く決まりがある。慢性的な介護士不足の中、この配置基準を維持し続けることは容易ではない。1人でも離職すれば、経営の土台がぐらつくことになる。

また、訪問1回当たりの報酬単価は国で定められており、自社で価格を自由に設定できない。限られた時間や条件の中で利益を出すためには、生産性向上が必須となる。

「世の中に介護士が足りない中で人を増やすことは難しく、価格を上げることもできない。残る道は、1人当たりの生産性を上げることでした」と宮﨑氏は語る。

非IT社長の選択:YouTubeで独学DX

そこで宮﨑氏が選んだのが、DX(デジタルトランスフォーメーション)で業務を効率化し、介護士が長く働き続けられる職場へと作り直す道だった。

DXの起点は、コストの見直しだった。社内の書類をまとめて管理するために使っていたグループウェアには、毎月約3万円のランニングコストがかかっていた。どうにか減らせないか――そう思って足を運んだのが、北見市のDX相談窓口だった。

相談する中で、求めている機能は「Google Workspace」で代替可能だと判明。使用するツールをGoogle Workspaceに一本化することを決めた。当時は「Gemini」が登場した時期でもあり、Google WorkspaceとGeminiを組み合わせて活用しやすい点も魅力だった。

しかし、宮﨑氏を含め、社内にプログラミングや生成AIの知識を持つIT人材はいない。赤字を抱える状況で外部のコンサルタントに依頼する選択肢も取れない。

「自分で作るしかない。そう考えて、YouTubeで勉強し始めました」

独学で学びながら、宮﨑氏は自身の介護士としての知見を生かし、現場で時間がかかっていた業務を効率化するツールを多数開発。さらに、それらをまとめたポータルサイトも作成し、職員が使いやすい環境を整えた。

自作ツールの効果:クリック数400回→4回、2時間→3分

開発したツールの一つに、訪問記録の入力補助アプリがある。従来は紙の書類に手書きし、後でパソコンに入力する作業が必要だったが、アプリ化によりタブレット一つで完結。クリック数は約400回から4回に削減され、入力時間も2時間から3分に短縮された。

また、シフト管理や給与計算の自動化ツールも開発。これまで管理者が手作業で行っていた業務が大幅に効率化され、残業時間の削減にもつながった。

「楽になった分は、サボっていいよ」――宮﨑氏は職員にそう伝え、業務改善の目的は「楽をするため」だと明確にした。この姿勢が、現場の抵抗感を減らし、DXの浸透を促進した。

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離職率7.7%、営業利益率10%超のV字回復

一連の改革により、離職率は83.3%から7.7%まで低下。赤字だった経営状態も改善し、営業利益率10%超を2年連続で維持している。職員の満足度も向上し、求人応募数も増加した。

宮﨑氏は「DXは決して特別なことではなく、現場の課題を解決する手段。ITに詳しくなくても、自分で学び、小さな改善を積み重ねれば、大きな成果を生み出せる」と語る。

同社の事例は、非IT企業におけるDX成功のモデルケースとして注目されている。特に、人手不足が深刻な介護業界において、現場主導のDXが有効であることを示している。