バイデン米大統領は28日、連邦政府機関による人工知能(AI)の活用に関する新たな指針を発表した。この指針では、政府がAIシステムを導入する際に、市民の権利や安全に与える潜在的な影響を事前に評価し、リスクを軽減する措置を講じることを義務付けている。
指針の背景と目的
ホワイトハウスによると、この指針は「AIの責任ある活用」を促進するためのもので、連邦政府がAIを導入する際の透明性と説明責任を高めることを目的としている。バイデン大統領は声明で「AIは政府のサービスを改善する大きな可能性を秘めているが、同時にプライバシーや市民の権利を脅かすリスクもある。この指針は、そのバランスを取るために重要だ」と述べた。
具体的には、連邦政府機関はAIシステムを導入する前に、市民のプライバシー、市民的自由、機会均等、そして差別の可能性について評価しなければならない。また、AIの判断が人間による見直しの対象となるよう、適切な監督メカニズムを構築することも求められる。
対象範囲と実効性
この指針は、連邦政府が調達するAIシステムだけでなく、政府機関が独自に開発するAIにも適用される。さらに、AIを利用した自動意思決定システムが市民に悪影響を及ぼす場合、市民はその決定に対して異議を申し立てる権利を持つべきだとしている。
ホワイトハウスの科学技術政策局(OSTP)のアロンドラ・ネルソン副局長は、「この指針は、政府がAIを導入する際の最低限の基準を定めるものだ。各機関はこれに従い、市民の信頼を損なわない形でAIを活用する責任がある」と説明した。
AIリスクへの対応強化
米国政府は近年、AIの急速な発展に伴い、リスク管理の強化を進めている。2022年には「AI権利章典」の枠組みを発表し、企業に対してもAIの責任ある開発と利用を促してきた。今回の指針は、政府自身がその模範を示すものと位置づけられている。
専門家からは、この指針が実効性を持つためには、各機関が評価結果を公開し、独立した監視機関によるチェックが必要との声も上がっている。しかし、ホワイトハウスは「この指針は法的拘束力を持つものではないが、各機関はこれを厳守するものとする」としており、遵守状況は大統領府が監視する方針だ。
この動きは、欧州連合(EU)がAI規制法(AI Act)の制定を進めるなど、世界的にAI規制が強化される流れと一致している。米国では、連邦レベルでの包括的なAI規制法はまだ成立していないが、今回の指針が今後の立法議論に影響を与える可能性もある。



