AIの活用によって従業員は週に平均11時間の業務時間を削減できたが、その時間の大半はAIの管理に費やされ、実質的な生産性向上に結びついていないことが、6000人を対象にした調査で明らかになった。調査結果は、企業向けAIプラットフォームを提供するGleanの調査部門であるWork AI Instituteが2026年6月10日に公開したリポート「Work AI Index」に基づく。
削減できた時間は「AIの管理」に消えた
リポートによると、知識労働者の4分の3はAIによって生産性が向上したと回答している。一方で、AIによって会社の業績が大幅に向上したと答えたのはわずか13%にとどまった。従業員はAIとのやり取りに費やした時間のうち、AIを使って業務を進める時間よりも、ツールを管理する時間の方がわずかに多かった。ツールの使い方を学んだり、エージェントを構築したりする時間は全体の27%を占めた。
リポートによると、従業員がAIに関わる時間の内訳は「AIの管理」が37%、「AIを使った実作業」が36%、「ツールの学習とエージェント構築」が27%だった。Work AI Instituteは「企業のAI活用が成功するかどうかは、AIを支える人的インフラに左右される」と指摘する。ユースケースを改善するために、リーダーはAIに企業固有のコンテキストを与え、従業員にユースケースの研修を実施し、シャドーAIを「会社が承認したツールが不十分であることを示す警告」として扱い、日々の意思決定にガバナンスを組み込む必要がある。
「AIの世話」に週6時間半
AIはこれまで人間が担っていた作業を引き受けつつあるが、従業員は今、AIの出力を業務で利用できるレベルに引き上げるための「目立たない作業」に時間を割いている。AIエージェントにコンテキストを与え、作業内容を確認し、間違いを指摘し、回答を修正するといった作業だ。リポートによると、従業員はこうした保守作業に週当たり6時間半近くを費やしている。単純な作業はミスにつながりやすく、従業員が出力結果を注意深く確認したり、AIの推奨内容が妥当かどうかを検証したりすることを仮に取りやめた場合、ミスは見過ごされる。実際に69%の従業員が「内容を検証していない成果物を提出したことがある」と認めている。
Gleanのレベッカ・ハインズ氏(Work AI Institute責任者)は、リポートで「多くの企業がAIの導入を、ライセンス数やプロンプト数、利用率の増加といった見かけだけの指標として扱っている」と述べる。ハインズ氏は「AIの利用が増えても、それが生産性やテクノロジーによる変革につながるわけではない」と指摘する。リポートによると、従業員はAIから有用な出力を得るために1時間を費やした後、それを提出できる状態にするためにさらに1時間かけている。AIとのセッションの3分の1以上は完全に失敗するため、従業員は最初からやり直すか、タスクを大幅に作り直す必要が生じるという。
成果を出す企業は何が違うのか
ハインズ氏は「AIを実際の業務の進め方の一部として組み込んでいる企業は、AIを使うこと自体が目的化している企業よりも成功する可能性が高い」と述べる。成功している企業は、AIの利用を支える人的インフラをより多く整備している。AIをどのように、どのタイミングで使うのか、さらに利用に当たってのガードレールについて従業員に研修を実施している。
リポートは「AI活用に成功する企業は、できるだけ多くAIを使おうとするのではなく、AIによって生まれた時間を、より質の高い人間中心の仕事や、より強固なAIスキルに再投資する方法を身に付けている」と述べる。企業が成果を得られるかどうかは、個人、チーム、組織のそれぞれのレベルで基盤を築けているかどうかに左右される。ハインズ氏は「適切なコンテキストに基づき、実際の成果によって評価され、品質の基準を下げることなく従業員が速く動けるように調整されている状態だ」と語る。
なお、Gleanの調査部門Work AI Instituteによる調査は6000人のデジタルワーカーを対象に実施された。リポート「Work AI Index」を作成するに当たり、Gleanのプラットフォームを利用するAI活用のリーダー層からの知見も加えた。調査は米国3000人、英国1500人、オーストラリア1500人のフルタイム勤労者を対象として、2025年12月から2026年1月に実施された。日本は調査対象に含まれていない。



