赤字2000万円なりんご園がDXで逆転、売上3倍に
赤字2000万円なりんご園がDXで逆転、売上3倍

「このままでは黒字にならない」。長野県岡谷市の農家、もりやま園・やまがた園の代表取締役である山崎三基氏は頭を抱えていた。一時は年2000万円の赤字となる経営状況の中、従来の栽培方法や収穫構造は「限界」を迎えていると感じていた。

もりやま園が生産しているりんごの1種。厳しい経営課題にどう立ち向かったのか。

祖父のノウハウを「データ」に変える

5代目である山崎氏がもりやま園を継ぎ、法人化後、最初に着手したのは経営に必要な情報の可視化だった。数十種類に及ぶりんごの品種がどこに何本植えられ、どのような作業にどれだけの時間がかかり、収穫量がどれくらいになるのか。「すべては先輩である祖父の頭の中にしかなかった」という。

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そこで山崎氏は、地元のIT企業と組み、作業記録・進捗管理システム「Ad@m」(アダム)を共同開発した。園内の樹木1本1本に二次元コード付きの「ツリータグ」を取り付け、全作業員が専用のアプリを入れたスマートフォンで「誰が、どの木に、何の作業をしたか。どれだけの時間をかけたか」などを記録する仕組みを整えた。

「データは会社の知的財産だ」と山崎氏は話す。Ad@m導入により、「品種ごとの1時間当たりの収益」(品種ごとの労働生産性)を可視化することに成功。これにより、稼げない品種のリストラや工程改善など、客観的事実に基づいた経営のPDCAサイクルを回せる環境が整った。

DXで見えた「黒字化は無理ゲー」という現実

デジタル化によって現場を俯瞰できるようになったが、その結果明らかになったのは、会社経営の厳しい実態だった。当時の労働生産性は、1時間当たり1200円だった。日本生産性本部の調査によると、もりやま園が法人化した2015年の日本の時間当たり名目労働生産性は、全産業で4800円ほど。それに対して農林水産業は1220円と全産業平均の4分の1ほどに留まる。農林水産業の中で見れば、もりやま園の数字は特に低いわけではないが、山崎氏は農業に対する危機感を抱いていた。

さらに作業データを精査すると、りんご作りにおける構造的な弱点が明らかになった。全作業の中で収穫前の工程――「剪定」に15%、果実を間引く「摘果」に30%、袋掛けを行うための「葉摘み」や「実回し」に30%の時間が費やされていた。つまり、全労働時間の75%は収穫前の準備工程であり、直接収益を生まない「捨てる時間」だった。限られた時期だけで年の収益を上げなければならない産業構造そのものが、限界を迎えていると感じたという。

「捨てていたりんご」が売り上げの半分を支える主力商品に

もりやま園はデータを駆使し、新規事業の立ち上げや栽培方法の見直しを進めており、売り上げを3倍に拡大している。年2000万円に及んでいた赤字は100万円にまで減少した。

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