ServiceNow Japanは2026年9月2日、「AI時代のセキュリティ運用」と題する記者説明会を開催し、米国ServiceNowが2026年8月4日(米国時間)に発表した自律型セキュリティ構想「Autonomous Security」と、それを構成する6つの統合ソリューションの日本展開を説明した。
資産管理を中核にセキュリティへ進出
ServiceNowは従来、ITサービス管理や資産管理、ワークフローを主業務としてきた。セキュリティ専業ベンダーがひしめく市場で、なぜ「自律型」まで掲げるのか。同社の答えは、CMDB(構成管理データベース)を中心とした資産管理とワークフロー、AIの3要素を単一のプラットフォームで統合している点にある。
同社の執行役員(執行役員 ソリューション営業統括本部 統括本部長)は「CMDBとワークフロー、AIの3つの要素は、どれか1つでも欠けては機能しない」と語る。AIだけを導入しても、CMDBがなければビジネス上優先すべき資産を判断できない。CMDBがあっても、ワークフローがなければ対応が現場任せの手作業になり、一貫した運用を継続できないという理由からだ。
CMDBに情報を統合し対応を自動化
具体的には、EDR(Endpoint Detection and Response)やSIEM(Security Information and Event Management)といった各ツールが検知した情報をCMDBに自動統合し、どの資産か、誰が所有するか、どの事業に影響するかという文脈に紐付ける。その情報を基に対応の優先順位を自動で算出し、ワークフローで検知から対応、解決、証跡の記録までを一貫して管理する。定型的な対応はAIに委ね、人間は戦略的な判断に集中する分担だ。
検知範囲を広げる役割を担うのが、買収で取り込んだ2社の技術だ。サイバーエクスポージャー管理を手掛けていたArmisは、IT資産に加えてOTやIoT、医療機器までをエージェントレスで検出する。買収額は77.5億ドルで、2026年に統合を完了した。アイデンティティセキュリティのVezaは、人やマシン、AIエージェントが実際に持つ権限をマッピングし、非人間アイデンティティ(NHI)の統制を支える。
「Shift Zero」を支える6つのソリューション
原田浩志氏(専務執行役員COO)は、これらを支える考え方として「Shift Zero」を挙げた。管理外の資産やブラインドスポット、統制されていないAIエージェントといった攻撃の起点を限りなくゼロに近づける発想だ。AIをセキュリティ運用に生かす「AI for Security」と、業務に導入したAI自体を守る「Security for AI」の2つのアプローチを組み合わせる。
Autonomous Securityは、以下の6つのソリューションで構成されている。
- Unified Exposure Management(統合エクスポージャー管理):資産や脆弱性、アイデンティティ、コードに散在するエクスポージャー(リスクの露出)を統合し、優先順位付けから修復までを一元管理する
- Continuous Vulnerability Detection(継続的な脆弱性検知):ITやOT、クラウド、コード全体の脆弱性をAIが継続的に検知し、リリース前の対応につなげる
- Identity & Access Security(アイデンティティとアクセスセキュリティ):人に加えてAIエージェントなどの非人間IDを一元管理し、最小権限の適用と休眠IDの排除を自動化する
- Agentic Incident Response(エージェンティックインシデントレスポンス):AIエージェントがインシデントのトリアージ(対応優先度の判定)や調査、封じ込めを自律的に実行し、リスクの高い判断のみを人間のアナリストに引き継ぐ
- Cyber-Physical Security(サイバーフィジカルセキュリティ):OTやIoT、医療機器の稼働を止めないエージェントレス方式で検出し、攻撃経路の分析やコンプライアンス検証を一元化する
- Cyber Risk & Compliance(サイバーリスクとコンプライアンス):統制状況を継続的に監視して証跡を自動収集し、SOC 2やISO 27001などの規制フレームワークに対応したレポートをオンデマンドで生成する
6つのソリューションの大半の機能は提供中だ。同社が「AIスペシャリスト」と呼ぶ、セキュリティワークフローを自律的に完結させるAIエージェント群のうち、「Tier 2 SOC AIスペシャリスト」や「脆弱性解決(Vulnerability Resolution)AIスペシャリスト」など4機能は2026年12月に提供を開始する予定だ。
既存のEDRやSIEMは置き換え不要
質疑応答では、多機能なソリューション群をどこから導入すべきか、既存ツールとの関係をどう考えるべきかという質問が出た。原氏は、既にServiceNowでITサービス管理や資産管理を運用し、CMDBを整備済みの企業が最初のターゲットだと答えた。既存の資産データベースにセキュリティの文脈を加えることで、少ない負担で運用を始められるためだ。
「既存のセキュリティソリューションをすべて置き換える必要はない。ServiceNowは、点在するEDRやSIEM、セキュリティセンサーといった既存のツール群から得られるシグナルを統合し、CMDBと紐付けて部門横断で対処していく、全体のオーケストレーターとしての役割を果たす」(原氏)
日本市場の戦略について原氏は、NIST(米国国立標準技術研究所)のサイバーセキュリティフレームワーク「NIST CSF 2.0」に同社のソリューション群をマッピングして見せた。「統治」「識別」「防御」「検知」「対応」「復旧」の6つの中核機能すべてをカバーすると説明する。重点業界には、IT以外の資産を大量に抱える製造や金融、流通、電力などの重要インフラ企業を挙げた。
パートナー戦略では、既存のコンサルティングファームやシステムインテグレーターとの協業をセキュリティ領域に広げるとともに、セキュリティ専業ベンダーやSOC(Security Operation Center)運営企業との新たな連携枠を構築する。



