Cequence Security(以下、Cequence)は2026年8月6日、NTTドコモに同社のアプリケーションおよびAPI保護プラットフォームが導入されたと発表した。ドコモのサービス基盤におけるアプリケーションとAPI、データの保護を目的とする。あわせて、AIエージェント向けのセキュリティとガバナンスの製品「Cequence AI Gateway」(AI Gateway)の国内提供を始める。国内では、2025年1月に販売代理店契約を結んだ伊藤忠テクノソリューションズ(以下、CTC)と連携して展開する。
ドコモへの提案で示した強みとは
APIを保護する製品は複数のベンダーが提供している。可用性と運用負荷の要件が厳しい大規模通信キャリアに対し、Cequenceはその中で何を強みとして示したのか。Cequenceの藤原大輔氏(日本カントリーマネージャー)に聞いた。
藤原氏は、ドコモへの提案で示した強みとして次の3点を挙げる。なおドコモ側は、採用理由を公表していない。
- 海外キャリアでの運用実績:Cequenceは海外の大規模通信キャリアにも製品を提供している。通信キャリアが受けるAPIへの攻撃はサービスごとに異なり、傾向も変わり続ける。現場で捉えた攻撃の傾向を機械学習モデルに反映し、製品へ取り込む。同社によると、毎日100億件以上のAPI通信と40億以上のユーザーアカウントを保護している。
- 発見から遮断までの一元化:管理下に置けていない「シャドーAPI」を検出し、仕様やコンプライアンスの観点で点検する。稼働中のAPIへの攻撃の検知と遮断も同じ基盤で扱う。同社はこの設計を「Unified API Protection」と呼ぶ。検知のツールと防御のツールを別々に運用する必要がない点を、提案時の利点として示した。
- API通信に的を絞った設計:従来のbot対策は、ブラウザやモバイルアプリからの人によるアクセスを主な保護対象にしていた。CequenceはWebとモバイル、API、AIの各チャンネルを対象とし、WAFでは判定しにくいビジネスロジックの悪用を検知する。
AIエージェントを守る制御
もう一つの発表がAI Gatewayの国内提供だ。AIエージェントと社内外のシステムの間に立ち、認証と認可、通信の制御を担う。
AIエージェントは、人の指示を受けてLLM(大規模言語モデル)に問い合わせるだけではない。APIやMCP(Model Context Protocol)サーバを経由し、SaaSや社内データベース、他のAIエージェントへ自律的にアクセスする。MCPは、AIエージェントが外部のツールやデータに接続するための規格だ。
ここで問題になるのが権限の設計だ。人と同じ権限をそのまま与えると、指示の解釈違いやプロンプトインジェクションによって、データを削除したりメールを誤送信したりしてしまう可能性が残る。管理者の承認を経ずに構築されたMCPサーバも同じ問題を抱える。
AI Gatewayの基本機能
AI Gatewayの主な機能は次の6点だ。
- APIとMCPへの安全なアクセス:AIエージェントが企業内外のAPIやMCPサーバへ接続する経路を集約する。藤原氏によると、検証済みのテンプレートから接続環境を用意できるため、管理外のMCPサーバが増えることを防ぐ。
- 認証と認可:AIエージェントを識別し、接続の可否を判断する。
- 動作の可視化:AIエージェントがどのLLMやAPI、データベースと通信したかを記録し、追跡できる。
- 最小権限のアクセス:「Agent Personas」(エージェントペルソナ)としてAIエージェントごとに操作の範囲を定義する。藤原氏は例として、メールの読み取りは許可し、送信と削除は許可しない設定を挙げる。人に付与した権限とは切り離して設定する。
- 行動分析とガードレール:単体では正常に見える操作の連鎖を分析する。機密データを抽出したAIエージェントが、そのデータを社外のアドレスへ送信しようとした場合などに、その動作を止める。
- ガバナンスとコンプライアンスの管理:AIエージェントの運用に必要な統制と記録を提供する。
藤原氏によると、AI Gatewayを経由しないAI通信も、既存のログを取り込むことで検出できる。社内で把握されていないAIエージェントの利用を洗い出す用途を想定する。
国内では、PoC(概念実証)から本番導入、運用までをCTCと連携して一貫して支援する。藤原氏は、日本固有のセキュリティ要件やコンプライアンス要件を本国本社の開発チームへフィードバックする取り組みや、データ処理を国内で完結させる仕組みの構築も進めていると述べる。
安全性を理由にAI利用を一律に禁じれば、生産性は上がらない。統制のないまま導入すれば、データ侵害やシステムの停止につながる。藤原氏は、労働人口の減少を背景に、AIの活用は日本企業にとって選択肢ではなく必須になりつつあると述べる。
「われわれが日本のお客さまに伝えたいのは、製品の売り込みではない。AIエージェントがもたらす利便性を、日本企業がセキュリティリスクに怯えることなく、スマートスタートで本番環境へ導入するにはどうすればよいか。そのための具体的なユースケースの共有とガバナンス基盤づくりを、CTCをはじめとするパートナーとともに支援していきたい」(藤原氏)



