コンサルティング大手のDeloitteが2026年8月12日に公開した報告書によると、企業は小規模な生成AIのユースケースから、組織全体で活用するエージェンティックAIシステムへの移行に苦戦している。同社はこの報告書のために500人以上のテクノロジーリーダーを対象に調査を実施し、経営幹部およびデータサイエンス部門のリーダー20人にインタビューを行った。
本格運用できる組織はわずか15%
テクノロジーリーダーの約半数は、自社の将来的なAI運用モデルについて明確なビジョンを持っていると回答した。しかし、マルチエージェントシステムを実際に本格運用できている組織はわずか15%にとどまる。回答者の多くは、従業員、業務プロセス、エコシステム内のパートナーシップ、セキュリティ、ガバナンスの各領域で準備不足であると述べている。
Deloitteのバイスチェアで米国TMT(テクノロジー、メディア、通信)業界リーダーを務めるチャイナ・ウィドナー氏は「今回の変化はエージェントの数を増やすことではなく、組織の中で仕事の進め方そのものを変えることだと、テクノロジーリーダーは認識すべきだ」と述べた。
既存プロセスへの上乗せでは限界
企業のIT支出はエージェンティックAIシステムに向かう傾向を強めているが、全社規模で本格的に導入する準備はほとんど組織で整っていない。Deloitteの調査対象となったテクノロジーリーダーによると、業務プロセスの半分をAIエージェントを中心に再設計し、エージェントが自律的に、かつ相互に協調して動作するようになるまでには、少なくとも3〜4年かかるという。
現在、多くの組織は業務プロセスをゼロから再設計するのではなく、既存のプロセスの上にAIエージェントを乗せて使っている。プロセスの根本からの再設計には何年もかかる場合があり、既存プロセスへの後付けは技術の導入を早めるが、エージェンティックAIが本来もたらすメリットを引き出すことはできない、と同報告書は指摘する。
CIOは技術と並行して戦略を策定
エージェンティックAIの導入で企業が直面した技術面の問題としては、統合されたアクセスしやすいデータ基盤の欠如、エージェントに対する信頼の欠如と管理・統治の難しさ、統合にかかるコストや複雑さが挙げられた。組織面の問題としては、従業員側の準備不足と業務プロセスの未整備が挙げられている。
AI技術の進化が急速であるため、CIOは絶えず進化し続ける必要がある状況に置かれているとウィドナー氏は指摘する。同氏は、AI戦略はテクノロジーの変化と並行しながら策定していく必要があると付け加えた。
Accentureが発表した報告書によると、エージェンティックAIはほとんどの企業に何らかのプラス効果をもたらしている。ただし、AI投資から持続的なビジネス価値、つまり取締役会に報告できる水準の成果を得ていると答えた組織はわずかだ。
エージェンティックAIの活用を意味ある形で深めたいと考えるCIOは、それが過去数年間に多くの企業が導入してきた線形的な生成AIモデルとは根本的に異なるタイプのテクノロジーであることを理解しておく必要があるとウィドナー氏は述べる。
自動化モデルではタスクやクエリは毎回同じ手順で実行されるが、エージェント型モデルの動作は予測しにくい。結果を検証するのは利用者の仕事であり、これはほとんどの人が慣れ親しんできた働き方とは大きく異なる、と同氏は語る。
「われわれは新しい時代に突入している。ここではテクノロジーとエージェンティックソリューションが自ら考え、あらゆる手順を指示されることなく、成果とそこへ到達する最適な道筋を見いだせるようになる」(ウィドナー氏)



