2026年3月29日、IRいしかわ鉄道・能美根上(のみねあがり)駅に、新たな賑わいの拠点が誕生した。駅の2階、改札口の隣にオープンした「能美根上55(ごーごー)食堂」と、駅前広場の保存車両を活用した「のみ電スマートストア」である。運営を担うのは、社会福祉法人佛子園(ぶっしえん)。駅舎や周辺の清掃、店舗運営を通じて、障がい者や留学生などの多様な雇用の場を創出すると同時に、地方鉄道の駅を、地域住民も気軽に集まれる拠点へと再生させる試みである。
「注文しなくてもいい」食堂がみんなの居場所に
駅舎の2階にある「能美根上55食堂」は、当初のカフェ計画を変更し、より大衆的で居心地の良い「食堂」という形に落ち着いた。メニューはラーメン、そば、うどん、カツ丼、カレーといった“王道”のラインナップで、朝7時から夜20時まで営業。出勤前の朝食から電車の待ち時間、学校帰りの高校生、さらには仕事帰りの一杯まで、幅広い層を迎え入れる。
能美電の引退車両が無人ストアとして復活
駅前広場に設置された「のみ電スマートストア」は、かつて能美電(能美電気鉄道)で活躍した車両を改装した無人コンビニである。能美電は1980年に廃線となったが、その車両が半世紀以上の時を経て、最新のスマートストア技術と融合した。店内には吊り革がそのまま残され、レトロな雰囲気の中で商品を購入できる。無人決済システムを導入し、キャッシュレスでの買い物が可能だ。
居場所づくりや丹念な清掃が、駅の治安にもつながる
佛子園の取り組みは、単なる店舗運営にとどまらない。同法人は駅舎や周辺の清掃業務も担っており、これが駅の治安維持に貢献している。いわゆる「割れ窓理論」とは逆に、清掃が行き届いた環境が利用者のマナー向上を促し、安心して利用できる空間を生み出している。障がい者や留学生が清掃スタッフとして働くことで、多様性を尊重した地域づくりにも寄与している。
美川駅の人流に見る、駅が変わる効能
この取り組みは、IRいしかわ鉄道の美川駅でも同様の効果を生んでいる。美川駅では以前から佛子園が清掃やイベント運営に関わり、駅構内の人流が増加。ベンチの設置や植栽の手入れなど、細やかな環境整備が利用者の滞在時間を延ばし、駅周辺の活性化につながっている。能美根上駅でも、同様の相乗効果が期待されている。
「ごちゃまぜ」が生む、新しくやさしい地域コミュニティ
佛子園は「ごちゃまぜ」の理念を掲げ、障がい者、高齢者、留学生、地域住民など、さまざまな背景を持つ人々が自然に交わる場を創出している。能美根上駅の食堂やスマートストアは、単なる商業施設ではなく、地域のコミュニティハブとして機能。電車の待ち時間に立ち寄るだけでなく、目的がなくても集える「第三の居場所」を提供している。



