2027年開始「こどもNISA」、金融教育の新たなステージへ
2027年開始「こどもNISA」、金融教育の新たなステージへ

2027年1月、未成年を対象とした非課税投資制度「こどもNISA」が始まる。2023年末に終了した旧ジュニアNISAに代わるこの制度を、待ち望んでいた家庭は少なくない。新NISAと同様に資産形成のメリットがある一方で、子どもが投資やお金について学ぶきっかけとなる点も注目されている。将来、投資を「自分ごと」として捉えられる人に育つことは、これからの時代に極めて重要だ。証券各社はこの課題にどう応えようとしているのか。主要ネット証券のこどもNISAをめぐる対応を紹介する。

こどもNISAの基本設計と旧ジュニアNISAからの改善点

こどもNISAは、0歳から17歳を対象とする未成年向け非課税投資制度である。現行のNISAが18歳以上に限られているのに対し、子ども名義で非課税の長期・積立投資が行える点が最大の特徴だ。開始は2027年1月が予定されている。年間投資枠は60万円、非課税保有限度額は600万円で、対象商品は現行NISAの「つみたて投資枠」と同様、長期・積立に適した投資信託が中心となる見込みである。教育資金など、子どもの将来に向けた資産形成を早期から後押しすることが、制度の主な目的だ。

旧ジュニアNISAと比較すると、使い勝手は大幅に改善されている。払い出し制限が緩和され、12歳以降は条件付きで引き出しが可能になる見込みのほか、18歳になると通常のNISAへ自動的に移行される設計で、運用を続けやすい。

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制度だけでは不十分、子どもが投資を「自分ごと」化する重要性

しかし、制度が整うだけでは十分ではない。子ども本人が投資や経済に関心を持たなければ、親が主導する積立で終わってしまい、将来にわたって自ら資産形成に取り組む大人になれるとは限らない。お金がどう増えるのか、投資信託とは何か、企業や経済とどうつながっているのか。これらを子どもが理解するには、投資を「自分とは関係ないもの」ではなく「自分ごと」として捉えられることが重要だ。そのためには、18歳で突然口座を渡すのではなく、幼いころから投資や経済に自然と触れ、関心を育てていく環境づくりが欠かせない。

2027年開始だが準備は今日から、親子でできる金融教育

こどもNISAの開始は2027年だが、準備を始めるのに制度開始を待つ必要はない。今日からでも、子どもが投資に触れる環境づくりは可能だ。例えば、未成年口座(親権者が子ども名義で開設できる証券口座)を開けば、自分名義の資産の状況を一緒に確認できる。あわせて取り組みたいのが、投資信託の基本を親子で学ぶことだ。「投資信託とは何か」「なぜ貯金だけではお金は増えにくいのか」——。こうした問いを話し合うところから始めてみよう。貯金との違いを比べながら、投資で資産を育てるという発想を伝えることで、お金の基本的な考え方が自然と身についていく。さらに、日々の経済ニュースを親子で共有し、自分たちの生活や資産への影響を一緒に考える習慣も、投資や経済を身近に感じるきっかけになるだろう。

こどもNISAの将来設計と証券各社の対応

こどもNISAは18歳で成人向けNISAへ移行する。つまり、この制度は18歳で終わるものではなく、育てた資産や投資経験をその後の資産形成へ引き継いでいくことを前提としている。この制度のねらいは、将来に向けた資産づくりにとどまらない。子どものころから資産形成に親しむことで、成人後も継続して投資に取り組める土台を築くことにある。2027年の制度開始まで半年あまり、この期間を投資を自分ごと化する準備期間として活用しておきたい。

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これまで、証券会社選びで重視されてきたのは、手数料や取扱商品の数だった。しかし、こどもNISA時代にはそれだけでは足りない。子どもが無理なく投資や経済に親しめるか、親子で資産状況や市場動向を継続的に確認できるか。こうした体験の質も、重要な要素になりつつある。そうした意味で、子ども向け機能や未成年口座の利用体験をどのように設計しているかも、証券会社選びの新たな判断材料になりそうだ。

主要ネット証券のこどもNISA準備状況

こどもNISA開始を見据え、主要ネット証券各社は準備を進めている。各社とも未成年口座を作成できる状態にあり、こどもNISA向けの特設ページを開設している。SBI証券(投資情報メディア)、松井証券(マネーサテライト)、マネックス証券(マネクリ)、楽天証券(トウシル)などが挙げられる。各社とも制度解説には力を入れているが、その内容は主に保護者向けだ。子どもが画面に向かってこれらの説明をじっくり読むとは考えにくく、子ども自身が日常的に触れることを前提とした内容とはやや性格が異なる。

では、アプリはどうだろうか。現時点で公開されている情報を見る限り、子ども向けアプリ機能は確認できなかったが、SBI証券だけが以下のような新機能をいち早く実装している。未成年口座の登録がある場合、現行のアプリ内で口座の切り替えができる。ホーム画面より、自身の口座に紐づく未成年口座に表示を切り替えられる。ニックネームやアイコンの変更ができる。成人口座になるタイミングでアプリ内に通知が表示される。ホーム画面で口座切り替えのモーダルを表示し、口座を切り替えると、親口座同様に資産の状況や資産・相場に関するニュースが確認できる。ニックネーム、アイコンの変更画面では多くのパターンがあり、兄弟でアプリを共有する場合でも安心だ。成人口座になるタイミングでは画面上部に通知が届く。

SBI証券の新機能と金融教育イベントの取り組み

こどもNISAで重要なのは、子どもが投資を自分ごととして捉えられることだ。その点、SBI証券アプリの新機能は「学ぶ」よりも「触れる」に重点を置いているように見える。教材を読むのではなく、日常的に自分名義の口座や相場情報を見ることで、自然と投資を生活の一部として捉えさせ、投資との接点をつくろうという姿勢や狙いが感じられる。また、同社のアプリでは、成人口座への移行時に通知が届く機能も備えており、成人後の投資への取り組みにもシームレスにつなげられそうだ。

金融教育への関心は、官民ともに高まっている。金融庁も積極的にキャンペーンを行っており、吉本興業のタレントが出演するイベントを全国で展開するなど、子どもが楽しみながら金融に触れられる機会づくりに取り組んでいる。証券会社側の動きを見ると、SBI証券では8月2日に子ども向けイベントの開催を予定している。9月の資産運用フェスにおいても、こどもNISAを楽しく学べるブースを設置する予定だ。以前より、同社では社をあげて金融教育に取り組んでおり、イベントにおける子どもとの向き合いでも本気度を感じる。SBI証券は8月2日に東京国際フォーラム(東京千代田区)にて、子ども向けイベント「夏休み自由研究フェス2026」を開催予定である。

今後の展望:投資を自分ごと化する環境づくり

子どもは、大人が思う以上にお金や経済に対する好奇心を持っている。その好奇心を資産形成への第一歩につなげられるかどうかは、家庭だけでなく、証券会社の役割にもなっていくだろう。2027年の制度開始に向けて、証券会社各社がどのような体験を提供していくのか。こどもNISA時代の競争は、商品の品ぞろえだけでなく、「子どもが投資を自分ごととして学べる環境づくり」へと広がっていきそうだ。

武藤貴子 ファイナンシャル・プランナー(AFP)、ネット起業コンサルタント。会社員時代、お金の知識の必要性を感じ、AFP(日本FP協会認定)資格を取得。二足のわらじでファイナンシャル・プランナーとしてセミナーやマネーコラムの執筆を展開。独立後はネット起業のコンサルティングを行うとともに、執筆や個人マネー相談を中心に活動中。