両備システムズ、こどもデータ連携実証で支援プロセスの有効性確認
両備システムズ、こどもデータ連携実証で有効性確認

両備システムズは6月12日、こども家庭庁の推進により大阪府豊中市が実施した「令和7年度こどもデータ連携実証事業」における成果報告を受け、データ連携とシステムによる判定、人による判断を組み合わせた支援プロセスの有効性が確認されたと発表した。同日には記者説明会が開催された。

こども家庭庁発足で加速するデータ連携と「こどもの杜」の開発背景

両備システムズ 公共ソリューションカンパニー 福祉・教育インテグレーション事業部 こども・教育DX推進部こどもDXグループ グループ長の丸川文彦氏は、こども連携プラットフォーム「こどもの杜」について「2023年4月にこども家庭庁が発足し、内閣府と厚生労働省の一部業務を移管するとともに文部科学省と協力し、こども政策の司令塔機能が一本化された。そのため、分野横断のデータ連携基盤が不可欠になったほか、福祉や教育、保健など部署ごとにシステムが分断し、情報はあるものの活用ができていなかったことから開発した」と話す。

こども家庭庁では、2023年度からこどもデータ連携(福祉、保健、教育などのデータ)の実証事業を継続して実施し、両備システムズでは豊中市に加え、2023年度に埼玉県美里町・川島町の分析主体として実証に参加した。同社は3年間、実証を継続してきた成果もあり、デジタル庁の「デジタル地方創生サービスカタログ」に、こどもデータ連携システムのモデル仕様書に唯一適合したサービスとして、こどもの杜が登録されている。

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こども家庭センター設置と自治体が直面する課題

一方、こども家庭庁の創設と時期を同じくして、自治体の現場では妊産婦や子育て世帯、こどもへの一体的な相談支援を行う「こども家庭センター」の設置が求められた。2026年5月1日時点の設置済み市区町村は1240、未設置は501となっており、児童福祉法と母子保健法の2つの縦割りを打破する取り組みだ。しかし、一体化した組織が求められる中で、組織の統合だけでは解決できない課題があった。それは、児童相談所における児童虐待相談対応件数が増加していることだ。

丸川氏は「支援ニーズの拡大に体制が追い付いておらず、情報は分断されたままでSOSを出せない家庭を早期に把握できないといった問題が顕在している。こうしたことから、組織内で横断的に情報共有ができ、潜在的に支援が欠かせないこどもや家庭が把握できる仕組みが必要となる」と説明する。そのうえで、豊中市の状況に関して同氏は「こども家庭センター(はぐくみセンター)の立ち上げは推進されていたが、相談や虐待報告を契機にした支援になってしまっていた。事象が発生する前にリスクを検知し、事前の介入による積極的、予防的な支援に改革していく必要があった」と振り返る。

豊中市における実証の概要

実証ではこどもの杜を活用し、分野横断で連携したデータをもとに、虐待リスクがあり、支援が必要なこどもの早期把握と、予防的な支援につなげる取り組みを実施。こどもの杜でリスクレベルが高いと判定したこどもについて、63人をこども家庭センター合同ケース会議対象者として専門職によって支援検討を行い、支援が必要とされた5人に対してアプローチと状況の聞き取りが実施され、2人の個別支援に至った。

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こうした背景から、母子保健、福祉、教育といった分野を越えてデータを連携し、潜在的に支援が必要なこどもを早期に把握し、予防的な支援につなげることを目的として、実証事業が行われた。事業は2025年7月~2026年3月の期間で住民基本台帳、福祉、母子保健、教育分野など、豊中市内の関係部署が保有するデータを連携し、リスク分析を実施。両備システムズでは分析主体として参画し、連携データをもとにリスクレベルを計算するための条件を設定して、支援の優先度やリスクレベルの推移を可視化する仕組みの構築を支援した。

こどもの杜システムは、豊中市独自のリスク分析モデルで「支援の優先度」と「該当する困難の類型」を判断し、抽出と人による判断を組み合わせた支援プロセスとなる。埼玉県美里町・川島町で構築・利用したデータ連携基盤を活用し、同市のデータ連携の仕組みを構築し、児童福祉や母子保健、校務支援など多様なデータを利活用してマイナンバーネットワークでセキュリティを担保した。

連携データをもとに、リスクレベル(1~23、数値が高いほどリスクが高いと判定)を付与し、一定以上のリスクが想定されるこどもを抽出し、結果をもとに児童福祉、母子保健、教育分野の専門職が参加する合同ケース会議を実施。データだけでは判断できない状況を踏まえ、支援の必要性や方針を多角的に検討した。

AIによるリスク判定と支援プロセスの高度化

実証においては、AIを活用してリスク項目の設定支援も行っている。これまで支援対象者の抽出を行うための項目と、その閾値の設定については職員の経験則で設定していた。既存の条件設定の見直しや新たなリスク判定項目と閾値を設定し、AIが過去データをもとに統計的手法を用いて分析・抽出して、条件設定における職員の業務負荷を軽減した。

連携データをもとに、支援が必要となるリスクの発生確率を考慮し、AIがリスク判定条件を自動生成する。これにより、職員は今後、支援対象者と向き合い、支援を行うことに注力できるようになるとのことだ。

その結果、これまで支援につながっていなかったこどもや家庭の状況を可視化し、必要な専門支援への接続や見守りにつなげる事例が確認された。また、すでに支援中のケースについても、データを再確認することで支援方針の見直しが行われるなど、支援の質の向上に寄与したという。2つのケースにおいて早期発見、プッシュ型・アウトリーチ型の支援につながり、こどもの杜を活用して困難な状況のこども・家庭の早期発見、効果的な支援になったとのこと。

今後の展望

豊中市では、実証で得られた知見をふまえ、リスク判定に用いるデータ項目や評価方法の見直し、個人情報の適切な取扱いに関する整理を進め、より実態に即した支援判断につなげていくことを予定し、2026年4月にこどもの杜を導入している。他方、両備システムズでは、実証により課題解決が証明され、2026年度以降にこどもデータプラットフォームが社会実装フェーズに移行することを見据え、2030年度に目標導入数30団体、売上高5億円を目指す。また、今回の成果をもとに自治体における分野横断的なデータ活用と、現場の判断を支える仕組みづくりを引き続き支援し、こどもや家庭に寄り添った支援を実現していく考えだ。