ハーバード大学のケネス・ロゴフ教授は、人工知能(AI)の急速な進展が雇用に与える影響について、先進国と途上国の格差を拡大させる「南北問題」を加速させると警告する。AI関連産業の恩恵を受けられる層と、社会保障財源の乏しい国々との間で明暗が分かれ、最終的には「破滅する世界」が訪れる可能性があるという。
AI熱狂の裏に潜む不安:勝者総取りの競争
米サンフランシスコのベイエリアでは、AIへの熱狂が最高潮に達している。トップクラスのプログラマーや開発者は数億ドルもの報酬を提示されて引き抜き合戦の対象となり、主要なAIスタートアップに早期参画した若手エンジニアの中には、35歳になる前に引退生活を手に入れることを夢見る者もいる。
しかし、その熱狂の裏には大きな不安が横たわる。AI業界の若きスーパーエリートたちが恐れているのは、自分が所属するスタートアップが勝者総取りのAI競争に敗れることだ。もし自社が勝者になれなければ、AIがホワイトカラーの仕事の大部分を代替する中で、自らが「取り残された人々」となり、「永遠の貧困層」に転落することを意味するからだ。
社会保障財源のない国々を襲う「むき出しの衝撃」
ロゴフ教授は、AIによる雇用喪失の影響は、社会保障制度が整っていない途上国で特に深刻になると指摘する。先進国には失業保険や再訓練プログラムなどのセーフティネットがあるが、財源の乏しい国々ではそうした仕組みがなく、失業者は「むき出しの衝撃」に直面することになる。
教授は「AI関連産業に投資できる国とできない国で、経済格差は決定的に広がる」と述べ、社会保障財源の有無が国家の明暗を分けると強調する。AIがもたらす生産性向上の恩恵は一部の国と企業に集中し、それ以外の地域は取り残されるリスクが高い。
AIによる世界の格差:未来への影響
AIによる格差の分断は、将来的に国際社会の安定を脅かす可能性がある。ロゴフ教授は「この破滅した世界をまだ誰も知らない」と警鐘を鳴らし、AIの進展がもたらす社会的・経済的影響について、早急な国際的な議論が必要だと訴える。
AIが雇用を奪うスピードは、これまでの産業革命とは比較にならないほど速い。教授は「政策立案者は、AIの恩恵を公平に分配し、取り残される人々を支援する仕組みを今から考えなければならない」と結論づけている。



