治療が難しい膵臓がんの早期発見に向け、神戸大学と富士フイルムなどの研究チームが、患者の腹部CT画像を大量に学習させた人工知能(AI)を開発した。2センチ以下の小さながんを専門医よりも高い精度で発見できることが確認され、人間ドックなどの画像診断の補助として実用化が期待されている。
開発の背景と課題
膵臓がんはCT検査で診断されることが多いが、腫瘍が小さいと専門医でも見落としやすいという課題がある。初期には症状がほとんど現れず、進行してから発見されるケースが多く、5年生存率は主要ながんの中で最低の約13%にとどまる。一方、ごく初期に発見して手術ができれば、10年生存率は90%を超えるとされ、早期発見が極めて重要である。
神戸大学大学院医学研究科の祖父江慶太郎准教授(放射線医学)らのチームは、この見落としを防ぐため、膵臓がん診断を補助するAIの開発を進めてきた。研究では、2000人以上の患者から収集した3916件のCT画像を使用。腫瘍そのものだけでなく、膵管の拡張や狭窄など、がんの兆候も学習させたAIを構築した。
高い検出性能を確認
造影剤を使用して撮影したCT画像をこのAIに評価させたところ、専門医とほぼ同等の診断精度を示した。さらに、より簡易な検査である非造影(造影剤不使用)のCT画像では、専門医を上回る性能を発揮。特に2センチ以下のがんに限定した場合、AIの発見率は86%に達し、専門医の41.1%の2倍以上となった。この研究成果は国際科学誌に掲載された。
チームは2027年度中の実用化を目標に掲げ、診断支援システムとしての導入を目指している。神戸大学の村上卓道教授(放射線医学)は「臨床現場に導入し、膵臓がんの早期発見につなげたい」とコメントしている。
専門家の見解と今後の課題
関西労災病院の竹原徹郎院長(消化器内科学)は、本AIについて「膵臓がんの見落としがないよう医師を補助するのに有用なツールとなり得る」と評価する一方、「非造影で感度が高いのは有意義だが、がんではないのにがんと判断する『偽陽性』を拾う可能性もあり、さらなる検討が必要だろう」と指摘している。
研究チームは今後、偽陽性の低減や臨床試験を通じた有効性の検証を進め、実用化に向けた課題をクリアしていく方針である。



