トヨタ自動車と日本電信電話(NTT)は、自動運転技術の高度化に向け、次世代通信基盤「IOWN(Innovative Optical and Wireless Network)」を活用した協業を発表した。両社は、光電融合技術をベースにした超低遅延・大容量通信ネットワークを構築し、自動運転車両の制御や路車間通信の効率化を図る。
協業の背景と目的
自動運転の実現には、車両が周囲の状況をリアルタイムで把握し、即座に判断するための高速・大容量通信が不可欠だ。現在の4Gや5Gでは遅延や帯域幅に限界があり、特に緊急時の制御や複数車両の連携に課題があった。IOWNは、光の技術を活用することで、従来のネットワークに比べて遅延を1000分の1、消費電力を100分の1に低減できるとされる。
トヨタは自動運転技術の開発を進めており、2021年に発表した「Woven City」でも高度な通信基盤を前提としている。NTTは2024年度からIOWNの商用サービスを開始しており、自動車分野への応用を模索していた。今回の協業により、両社は自動運転向けの専用通信プロトコルやエッジコンピューティングの最適化を共同で進める。
実証実験の計画
両社は2025年までに、静岡県内のテストコースで実証実験を開始する予定だ。実験では、IOWNを介した車両間通信や、信号機・歩行者センサーとの路車間通信の性能を検証する。具体的には、交差点での衝突回避や、高速道路での隊列走行における遅延時間の測定が行われる。
トヨタの担当者は「IOWNの超低遅延特性は、自動運転の安全性を飛躍的に向上させる可能性がある。特に、見通しの悪い交差点や歩行者の飛び出しなど、人間の反応を超える状況での迅速な判断に役立つ」とコメントしている。NTTの責任者も「自動車産業はIOWNの重要な応用分野の一つ。トヨタとの協業で、次世代モビリティ社会の基盤を築きたい」と述べている。
2030年以降の社会実装
実証実験の成果を踏まえ、両社は2030年以降の社会実装を目指す。具体的には、自動運転車両向けの通信モジュールの標準化や、路側機へのIOWN対応機器の設置を進める。また、データ処理の一部を車両からネットワーク側に移す「車両-クラウド連携」の最適化も検討する。
自動運転の実用化には、通信インフラの整備が不可欠だが、IOWNの導入には光ファイバーの敷設や基地局の更新など、大規模な投資が必要となる。両社は政府や自治体と連携し、規制緩和や補助金の活用も視野に入れている。業界関係者は「IOWNの自動運転への応用は、日本の通信技術と自動車産業の競争力強化につながる」と期待を寄せる。



