政府は、第5世代移動通信システム(5G)のインフラ整備に総額1兆円を投入し、2027年度までに全国のカバー率を90%に引き上げる方針を固めた。関係者によると、総務省が2027年度予算の概算要求に盛り込む見通しで、基地局の整備や光ファイバーの敷設を加速する。
地方のデジタル格差是正が狙い
現在の5Gカバー率は約70%で、都市部と地方で格差が顕著だ。政府はこの格差を解消し、地方創生につなげるため、新たな補助金制度を創設する。通信事業者に対して、過疎地域での基地局建設コストの半分を補助する方針で、財政投融資も活用する。
総務省の担当者は「5Gは自動運転や遠隔医療、スマート農業など、地域の課題解決に不可欠なインフラだ。全国どこでも高速・大容量通信を利用できる環境を整えたい」と述べている。
自動運転や遠隔医療の実用化促進
5Gの高速・低遅延の特性を生かし、自動運転の実証実験が進む地域では、2028年度までの実用化を目指す。また、遠隔医療では、専門医が少ない離島や山間部での診療支援が期待される。総務省は、2027年度までに全国100カ所以上で遠隔医療の実証事業を実施する計画だ。
経済産業省も連携し、5Gを活用したスマート工場の導入支援にも乗り出す。中小企業向けに、通信設備の導入費用の一部を補助する制度を2027年度から開始する予定で、年間500社の支援を目標とする。
財源は通信事業者の負担軽減が鍵
1兆円の財源のうち、約6000億円は既存の基金や予算の流用で賄い、残りは通信事業者からの拠出金や政府の補正予算で対応する方針だ。通信各社は基地局整備に年間数千億円を投資しているが、収益性の低い過疎地への投資には慎重な姿勢を示していた。
政府は、補助金の拡充により事業者の負担を軽減し、整備を加速させる狙い。KDDIの担当者は「政府の支援があれば、地方への投資を前向きに検討できる」とコメントした。
2027年度までに全国カバー率90%達成へ
政府は、2027年度までに全国の世帯カバー率を90%以上にする目標を掲げる。これは、人口カバー率ではなく、世帯ベースでの目標で、より実質的な通信環境の改善を目指す。総務省は、目標達成のため、基地局の整備計画を年度ごとに策定し、進捗を管理する。
専門家からは「目標達成には、電波法の規制緩和や、自治体との連携強化も必要だ」との指摘もある。政府は、関係省庁と連携し、2027年度中に必要な法改正を行う方針だ。



