5Gの商用化で世界に後れを取った日本が、次世代通信規格「6G」で巻き返しを図る。総務省が2023年6月に策定した「Beyond 5G推進戦略」では、2030年代の実用化を目指し、官民が連携して研究開発と国際標準化を推進する方針が示された。
5Gの失敗を教訓に
日本は5Gにおいて、基地局の整備や周波数割り当ての遅れから、韓国や中国、米国に後れを取った。この反省を踏まえ、6Gでは「国際競争力の強化」を最優先課題に掲げる。戦略では、政府が2025年度までに6G関連の研究開発に総額500億円を投じ、民間企業の投資を呼び込む計画だ。
総務省の担当官は「5Gの教訓を活かし、標準化の初期段階から日本が主導権を握る」と強調する。具体的には、国際電気通信連合(ITU)や3GPPでの提案を強化し、日本の技術を世界標準に取り込む狙いだ。
6Gがもたらす変革
6Gは、5Gをさらに進化させ、超高速・大容量(100Gbps以上)、超低遅延(1ms以下)、超高信頼性に加え、新たに「拡張現実(AR)」「触覚通信」「デジタルツイン」などの高度なサービスを可能にする。総務省の資料によれば、6Gの市場規模は2035年には約100兆円に達すると見込まれている。
日本の強みは、光通信や半導体、材料技術といった基盤技術にある。NTTやNEC、富士通などの大手企業が、それぞれの技術を活かして6Gの要素技術開発を進めている。特に、NTTが提唱する「IOWN(Innovative Optical and Wireless Network)」構想は、光ベースのネットワークで6Gの基盤を担うと期待される。
産学官連携の推進
政府は2024年度に「Beyond 5G新世代ネットワーク研究所」を設立し、大学や研究機関と連携した基礎研究を加速する。また、スタートアップ支援にも力を入れ、6G関連のベンチャー企業への補助金や税制優遇を検討している。
一方で、課題も多い。国際標準化では、中国や米国、欧州との競争が激化しており、特許の獲得競争も熾烈だ。また、巨額の投資が必要な6G基地局の整備や、電波資源の確保も難題である。
日本の戦略の行方
専門家は「日本が6Gでリーダーシップを発揮するには、官民の緊密な連携と、国際的な協調が不可欠」と指摘する。総務省は、2025年までに6Gの周波数割り当ての国際的な合意形成を目指し、各国との調整を進める方針だ。
日本の6G戦略は、単なる通信インフラの高度化だけでなく、自動運転や遠隔医療、スマートシティなど、社会全体のDX(デジタルトランスフォーメーション)を牽引する役割を担う。5Gの遅れを取り戻し、再び世界の通信技術をリードする日は来るのか。その成否は、今後の官民の取り組みにかかっている。



