落ち込んでいるときに「落ち込むのはやめよう」と思っても、それで元気になるわけではありません。不安なときに「不安になるな」と言い聞かせても、不安は簡単には消えません。イライラしているときに「怒ってはいけない」と抑え込もうとするほど、かえって怒りが強くなることもあります。心は、自分で思っているほど自由に操れるものではないのです。
体を整えることから始める
一方で、体は比較的扱いやすいものです。深い呼吸をする。背筋を伸ばす。少し歩く。水を飲む。湯船に浸かる。早めに布団に入る。こうした行動は、気分が沈んでいるときでも、不安が強いときでも、実行しようと思えばできます。そして、体を動かしたり、休ませたりすると、心の状態も少しずつ変わっていきます。
例えば、同じひと言を言われたとしても、よく眠れた翌日なら受け流せるのに、寝不足の日には深く傷ついたり、腹が立ったりした経験は誰にもあるでしょう。普段なら気にならない仕事のミスが、疲れている日には「自分はダメだ」という思い込みにつながることもあります。これは、その人の性格が急に弱くなったわけではありません。体に余裕がなくなり、心を支える力が落ちているのです。
反対に、体が整っていると、心は必要以上に揺さぶられにくくなります。よく眠れている。呼吸が深い。肩や首の力が抜けている。歩いたあとで体が温まっている。こうした状態のとき、人は物事を落ち着いて受け止めやすくなります。
メンタル強化より体の状態を優先
「メンタルを強くしたい」と考える人ほど、まずは体に目を向ける必要があります。強い心をつくるために、心を先に鍛えようとするのではなく、心が安定して働ける体の状態をつくる。こちらのほうが自然な順番です。毎日の中には、心を揺さぶる場面がいくつもあります。そのたびに「もっと強い心を持たなければ」と自分にプレッシャーをかけ続けていたら、心はますます疲れ切ってしまいます。
ポジティブシンキングの限界
「何事も前向きに考えよう」「最悪な出来事にも、きっと意味がある」――落ち込んだとき、不安になったとき、こうした言葉に励まされた経験がある人は多いと思います。しかし、物事の受け止め方を変えることは大事ですが、それだけでは不十分です。体の状態を整えることで、心の揺れを穏やかにすることが、より効果的なアプローチと言えるでしょう。



