ビジネスAIで「1人1台」は本当に正しいのか──世界1500万人に教えた開発者が語る、タブレット学習の誤解。エヌマ(Enuma, Inc.)のCEOスイン・リー氏とCTOコンホ・リ氏は、スクリーンタイムの懸念に対して「時間の長さ」だけでなく「誰と、どう使っているか」という質の議論が重要だと指摘する。
スクリーンタイムの懸念と質の議論
世界保健機関(WHO)は2019年、2~4歳の子どもの座位でのスクリーンタイムを1日1時間以下にすることを推奨するガイドラインを公表した。Appleは2018年のiOS 12でスクリーンタイム機能を、Googleも同年にAndroidへDigital Wellbeingを搭載し、いずれも利用時間の可視化と制限を可能にしている。プラットフォーマー自身が「使いすぎ」への対処を製品に組み込んできた経緯がある。
したがって、スイン氏の主張は「時間を気にしなくてよい」という意味ではない。問題を「時間の長さ」だけで捉えると、「誰と、どう使っているか」という質の議論が抜け落ちるという指摘だと筆者は受け取った。
AIが目指すべき方向
そのうえで彼女は、これからのAIや高度なテクノロジーが目指すべき方向をこう語る。人と人を結びつけ、一人ひとりを拡張して、ほかの人と同じレベルの判断ができるよう助けること。AIの力で、人々をバラバラにするのではなく、1つにすること。それこそが、これまでのEdTechと根本的に違う点だと2人は口をそろえた。
「つまずく子」のために作られた原点
なぜ彼らはここまで「みんなを集める」ことにこだわるのか。それは、このアプリがそもそも誰のために作られたかに関わっている。
出発点は、紙と鉛筆による従来型の学習ではつまずいてしまう子どもたちに、もっとよい方法を届けたいという思いだった。学びに困難を抱える子、特別支援教育を受ける子が、いつも「心の底にあった」とスイン氏は振り返る。
象徴的なのが、2025年に2人が韓国政府向けに手がけた仕事だ。特別支援学校向けの教材を制作し、その一部に「トドさんすう」を調整して取り入れた。2026年から子どもたちが実際に使い始め、重い障害がある子であっても学習に取り組み続ける姿を見て、ようやく確かな手応えを得られたという。
次ページでは「つまずく子を起点に教材そのものを設計」について詳しく掘り下げる。



