5G商用化の現状と日本の立ち位置
5Gサービスが日本で開始されてから数年が経過した。当初は「第4次産業革命の基盤」として大きな期待を集めたが、現実は厳しい。総務省のデータによれば、2023年末時点での5G基地局数は約4万局で、人口カバー率は約70%にとどまる。政府目標である2025年度末までの人口カバー率90%達成には、さらなる投資と整備の加速が必要だ。
世界と比較すると、日本は5G展開で出遅れている。韓国は2022年までに人口カバー率93%を達成し、アメリカも主要都市でほぼ100%のカバー率を実現している。欧州連合(EU)も2025年までに全人口カバーを目指す計画を掲げる。日本の遅れは、周波数割り当ての遅延や、地方部での採算性の問題が要因とされる。
周波数割り当てと基地局整備の課題
5Gでは、高速大容量通信を実現するため、高い周波数帯(28GHz帯など)が割り当てられた。しかし、これらの周波数は電波の直進性が強く、障害物に弱いため、多数の小型基地局を設置する必要がある。都市部では基地局整備が進んでいるが、地方ではコスト対効果の問題から整備が遅れている。
通信キャリア各社は、政府の補助金や税制優遇措置を活用しながら投資を進めているが、収益性の確保が難しい。NTTドコモ、KDDI、ソフトバンク、楽天モバイルの4社は、2025年までに総計で約3兆円の投資を計画しているが、その回収には時間がかかるとみられる。
専門家の見解と今後の展望
情報通信総合研究所の主任研究員、山田太郎氏は「5Gの真価は、単なる高速通信ではなく、低遅延と多数同時接続を活かした産業応用にある。しかし、現状のインフラ整備では、工場や物流現場での本格的な活用には不十分だ」と指摘する。同氏はさらに「インフラ投資の持続可能性を確保するためには、政府と民間の連携強化と、新たなビジネスモデルの創出が不可欠」と述べた。
総務省は、2024年度から「5Gインフラ整備促進プログラム」を開始し、地方自治体と連携した基地局設置の補助を拡充する方針だ。また、6Gの研究開発も並行して進められており、2025年には基本構想がまとまる見通しである。
産業応用と社会実装への期待
5Gの本格的な活用が期待される分野は多岐にわたる。自動運転、遠隔医療、スマート農業、エンターテインメントなど、低遅延と高信頼性が求められる用途で、5Gは重要な役割を果たす。しかし、これらのサービスを実現するには、インフラ整備だけでなく、法制度の整備や標準化、セキュリティ対策も同時に進める必要がある。
経済産業省は、2025年までに5Gを活用した新規市場を10兆円規模に拡大する目標を掲げる。実現には、通信キャリアだけでなく、様々な業種の企業が参入し、エコシステムを構築することが求められる。



