第108回全国高校野球選手権大会(甲子園球場)で、初出場の有明(熊本)が16日、3試合連続となる逆転勝ちで8強入りした。試合直前に先発投手がけがに見舞われたが、今大会は全て救援登板だった斉藤遼汰郎投手(3年)が先発して好投。味方打線は終盤に劣勢をはね返し、東日本国際大昌平(福島)に4―1で勝利した。
試合前のアクシデント、急きょ先発
試合前の練習中、アクシデントが起きた。先発だった工(たくみ)修哉投手(3年)の利き手の左手甲に、他の選手が素振りをしていたバットが当たった。熊本大会からここまで全7試合に先発した柱が登板回避。急きょ先発したのが、その7試合全てで救援してきた斉藤投手だった。
工投手から「ごめん。頼んだ」と託された斉藤投手は「自分が完投するしかない」とマウンドに向かった。一回は力みで制球が甘くなり、わずか8球で先制されたが、「粘り強く」と言い聞かせて投げた。工投手からも「打たせて取ろう」と助言を受けて尻上がりに調子を上げると、打線が奮起。九回二死から逆転した1回戦のような粘りを見せ、八回に4得点して試合をひっくり返した。
打線が奮起、逆転勝ち
代打で逆転2点打を放った広沢遼太朗選手(同)は「全員でカバーして絶対に勝とうと話していた」と胸を張った。斉藤投手はその後も追加点を許さず、最後の打者を打ち取ると左腕でガッツポーズ。高見一茂監督は「丁寧に投げてくれた。安心して今日は見るだけだった」とたたえた。
熊本県北部の山鹿市出身で「(被災地に)元気を与えられたと思う。チームを助ける粘り強い投球で、また元気を与えたい」と誓った斉藤投手。16日夜には工投手の骨折が判明した。斉藤投手は準々決勝でもチームを救う投球を見せるつもりだ。
アルプス席も沸く、避難所も歓喜
快進撃にアルプス席は沸いた。同県宇城市から駆けつけた有明OBの農業の男性(37)は、地元の消防団員としての活動などに追われ、今回が初観戦。劇的な勝利を続ける後輩に「3度の逆転勝ちはミラクルで、これは有明旋風だ。熊本に元気をくれている」と涙ぐんだ。
有明の3度目の逆転劇に、避難生活を強いられている被災者らも歓喜に沸いた。震度7を観測した熊本県宇城市の避難所となっている小川中学校体育館では被災者ら約10人がテレビで観戦。1点を追う八回二死満塁の好機でタイムリーヒットが飛び出すと「逆転だ!」「やったー」などと歓声を上げ、拍手を送っていた。
地震で自宅が半壊した男性(69)は「選手たちは何度も逆転して頑張る姿を見せてくれる。私も復興に向けて頑張りたい」と話した。



