習近平の「3つの夢」が招いた中国サッカー崩壊、約40クラブ消滅
習近平の「3つの夢」が招いた中国サッカー崩壊

中国サッカー界は、習近平国家主席が掲げた「3つの夢」の重圧と、不動産バブルの崩壊によって壊滅的な打撃を受けている。2002年の日韓共催ワールドカップを最後に、中国は本大会の出場から遠ざかっている。スポーツライターの木崎伸也氏は、著書『サッカーと地政学』(ワニブックス)でその経緯を詳細に分析している。

習近平の「3つのサッカーの夢」が国策に

2011年、当時国家副主席だった習近平氏はインタビューで「中国には3つのサッカーの夢がある。W杯に出場し、開催し、そして優勝することだ」と語った。この発言は単なる願望に留まらず、長期的な国家方針として受け止められ、不動産企業、地方政府、国有企業がこぞってサッカー界に参入した。

中国スーパーリーグは激変した。元ブラジル代表のオスカルがチェルシーから上海上港へ、元アルゼンチン代表のカルロス・テベスがボカジュニアーズから上海申花へ、スロバキア代表のマレク・ハムシクがナポリから大連一方へ、コートジボワール代表のディディエ・ドログバがチェルシーから上海申花へ――世界中のスター選手が次々と中国に渡った。この爆買いにより、2015-2016シーズンの推定移籍金総額は4億5100万ドル(当時のレートで約540億円)に達し、世界ランキング5位にランクインした。

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不動産バブル崩壊と「三条紅線」でクラブが連鎖消滅

しかし、中国サッカーは急失速する。背景には不動産バブルの崩壊があった。中国の不動産デベロッパーは過剰な負債を抱え、ビジネスモデルの限界が近づいていた。2020年、中国政府は歯止めをかけるために「三条紅線(3つのレッドライン)」を導入し、負債の多い企業がそれ以上融資を得られないようにした。借金の蛇口を一気に締めた結果、多くの不動産会社が窮地に陥り、クラブ経営どころではなくなった。不動産不況は地方政府の税収にも直撃し、自治体によるクラブ支援も困難になった。

コロナ禍でリーグが延期になったこともクラブ財政を直撃した。2020年に天津天海が解散。2021年には家電販売の蘇寧グループが不動産など多角化経営に失敗し、同社が持っていた江蘇が消滅。倒産は連鎖的に広がり、2022年に重慶、2023年に広州城、武漢長江、河北が姿を消した。そして、不動産大手・恒大集団の経営破綻により、広州は選手や職員の給料を払えなくなり中国リーグ2部へ降格。2025年、リーグ最多優勝回数を誇る名門は解散に追い込まれた。2020年以降、中国では約40のプロサッカークラブが消滅した。

汚職騒動と元代表監督の逮捕

汚職騒動も混乱を大きくした。2022年、習近平氏の方針で検察がプロサッカーにおける賄賂と八百長に関する調査を開始。2024年3月、中国サッカー協会元会長が収賄罪で無期懲役、同年8月に元副会長が収賄罪で禁錮11年を言い渡された。そして同年12月、元中国代表監督の李鉄に収賄罪で禁錮20年が言い渡された。元代表監督の逮捕は前代未聞である。

木崎氏は、こうした一連の出来事が中国サッカーに深刻な傷を残したと指摘する。かつて国策として推進されたサッカーは、今や崩壊状態にあり、W杯出場の夢は遠のくばかりだ。

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