トップ選手が次世代に伝える心構え
ミラノ・コルティナ冬季五輪スノーボードアルペン女子に出場した三木つばき選手(23)=掛川市出身、浜松いわた信用金庫=が、競技の認知度向上と後進育成に乗り出した。現役トップアスリートとして、試合に臨む心構えから活動資金調達のコツまで惜しみなく伝授。夢は、育てた選手たちと共に五輪の舞台に立つことだ。
三木選手は6月20日、掛川市の「22世紀の丘公園たまりーな」で開かれた講座で、トップアスリートを目指す中学2年から高校2年までの男女4人にこう語りかけた。「自己分析して自分を理解することで、試合当日の様々な局面で即座に判断できるようになり、試合に集中できる」
「ほたるプロジェクト」の全容
三木選手が5月にスタートさせた「ほたるプロジェクト」は、面接で選ばれた有望選手を対象に、8月まで3週間に1度、栄養管理やトレーニング方法を指導する。来年1月には長野県のスキー場で雪上練習も予定している。
講座では、試合で実力を発揮するために必要な能力について「成功や失敗をもとに『なぜそうなったのか』を自己分析し、即時に対応できること」と説明。具体例として「試合会場で歓声が気になったら、イヤホンをしたり、歓声の聞こえない場所に移動したりして、最も力を出せる状態を意図的に作り出す」と述べた。
資金調達のノウハウも伝授
三木選手の挑戦を支える母・志保子さん(51)も講師として参加。活動資金の経理や海外滞在計画の立て方について講義を行った。志保子さんは、スポンサー獲得の際に「飛行機代に550万円ほどかかっているので半分負担してほしい」と具体的な金額と用途を説明したところ、協力企業が増えたエピソードを紹介。参加者はメモを取りながら熱心に耳を傾けた。
プロジェクトに参加する横浜市鶴見区の高校1年生(15)は「負けた時も転倒だけを理由にせず、もっと自己分析をしたい。スポンサーを集めるために志保子さんの話を実践したい」と語った。
危機感が生んだ育成プロジェクト
三木選手がプロジェクトを始めた背景には、国内におけるスノーボードアルペンの認知度の低さに対する危機感がある。ミラノ・コルティナ冬季五輪では、フィギュアスケートは男女ともに最大3人が出場し、銀・銅メダルを日本勢が独占するなど脚光を浴びた。一方、スノーボードアルペン女子は最大4人の出場枠に対し、エントリーは三木選手と竹内智香選手の2人だけだった。
三木選手は「私1人が五輪のスノーボードアルペンで金メダルを取ったとしても、認知度を上げるのには限界がある。今後は最大人数で出場し、みんなで決勝に上がり、日本人対日本人という構図が見られる競技にしていく必要がある」と考え、ほたるプロジェクトの開催に踏み切った。
8年後、12年後の五輪共闘を誓う
三木選手は「トップアスリートとして知らないといけないことを次世代を担う選手たちに伝え、8年後、12年後、一緒にオリンピックに出たい」と抱負を語る。現役選手でありながら、後進育成に力を注ぐその姿は、スノーボードアルペン競技の未来を切り開く原動力となるだろう。



