鉄道写真家の南正時氏は、1971年の冬に蒸気機関車(SL)を撮影するため、初めて福島県の会津地方を訪れた。当時は上野駅から夜行急行「ばんだい」で会津若松駅まで向かうのが時間的に効率的だったという。
会津若松から3路線の選択肢
会津若松に到着すると、只見線、会津線、そして喜多方からの日中線(すでに廃止)の3路線があり、その日の天候によってどの線のC11形蒸気機関車を撮影するか決めていた。南氏は「それほどにこの3つのローカル線はそれぞれ魅力がある線で、天気次第で行先は変わった」と振り返る。
会津線の魅力と四季の情景
特に風景が気に入り、頻繁に訪れたのは会津線だった。沿線には芦ノ牧温泉や湯野上温泉があり、湯野上温泉は駅前に湯治温泉の雰囲気を残していた。現在の湯野上温泉駅は、当時は単に「湯野上」という駅名だった。南氏は湯野上を拠点に、撮影地への移動には気動車を利用した。
満開の桜を横目に田部原(現・田島高校前)付近を走るC11形牽引の列車や、雪深い冬の湯野上駅でC11形と乗客たちの姿が、南氏のカメラに収められている。また、会津田島駅に停車するC11形の写真も残されている。
ダム湖に消えた名撮影地
会津線の一部区間は、ダム建設によって水没した。桑原駅の給水塔とC11形蒸気機関車の写真は、現在はダム湖の底に沈んだ貴重な記録である。かつては行き止まりの「秘境路線」として知られ、ダムに消えた絶景もあった。
南氏は「湯野上付近を走るC11形牽引の貨物列車」など、半世紀前の会津線の日常を鮮明に伝えている。



