Mトーナメント2ndステージが開幕した。1stステージを2位で通過した者同士が激突する。ここからは上位2人が勝ち抜けるシステムで、「1位通過と2位通過の価値が同じ」となる。
小林剛、U-NEXT Pirates船長として最後のMトーナメント
2ndステージに登場したのは小林剛。U-NEXT Piratesを8年間引っ張ってきた「船長」だ。8年間で2回の優勝を経験している。小林剛は来季、船から降りることが決まった。「優しい海賊団」の船長も、自身を襲う不調の波には抗いきれなかった。このユニフォームを着て対局するのはMトーナメントで一旦最後となる。小林はいつもと変わらない穏やかな表情で卓へと向かった。一方で、心は熱く燃えていたのかもしれない。
親番での勝負、リーチ宣言牌をポン
そう思えるほどの熱を帯びた選択が見られたのは、1戦目の南1局2本場。親番は小林。小林は25400点持ちの2着目であった。そこへ佐々木寿人からリーチが飛んできた。小林は「ポン」と寿人のリーチ宣言牌5索をポンして勝負を挑んだ。余談だが、小林はこのような副露時に、鳴いた牌を見やすいところでストップしてくれる。ここではポンした5索を画像のところで「しばらくは止めたあとで」右端に寄せていた。この「一時停止」があると本当に見やすい。また、観戦記のライターとしてもスクリーンショットが撮りやすくて助かる。「麻雀を見てもらっている」というプロ意識の高い選手、それが小林剛だ。
危険牌を押し続ける麻雀サイボーグ
話を戻して、寿人のリーチ宣言牌5索を鳴いた小林は、3索を切ってテンパイをとった。3索は通っている牌ではないが、テンパイが明らかな他家がいる以上、親番側としても速度を合わせようという鳴きだ。さらに次巡、小林は4筒を持ってくる。これも上家の寿人に通っていない牌だ。しかもドラが2筒なので、1-4筒待ちに刺さったときには打点がついてくる。この4筒を小林は切った!まだまだ通っていない牌が多いので、親番のリャンメンテンパイで貪欲にアガリを狙った。あまり親番にこだわりを見せない小林だが、ここは2試合しかない短期決戦。2人が勝ち上がれるとはいえ、大量得点のチャンスでもある親番を簡単に捨てるわけにはいかない。小林は淡々とした表情だった。「麻雀サイボーグ」とも呼ばれる小林剛。自分が有利だと思う選択を静かに紡ぎ出していく。
最終盤の判断、4索を押すか引くか
捨て牌三段目に差し掛かったところで、またもや無筋の8萬がやってきた。ここはまだ押す!アガリもあるうえ、局の終わりが見えてきたので、流局時テンパイを追うことも重要だ。日和るには早い。この8萬も通過。いよいよ、小林と寿人の二軒テンパイで流局か――と思われた最終盤。小林のもとにやってきた、この局最後の牌は、寿人に通っていない4索だった。さすがの麻雀サイボーグも表情が変わる。俯瞰的に見てみよう。何度見ても4索は通っていない。1-4索待ちも4-7索待ちも残っている。しかも4索はこの局で河に捨てられる最後の牌なので、他家からロンの声がかかった場合にはホウテイロンという役が付いてくる。相当切りにくい牌だ。親が落ちてもまだ2着目で南場を戦える。どうする…『ピーガシャガシャ…』麻雀サイボーグのコンピューターが目まぐるしく動く。『チーン!』答えが出たようだ。小林は押した!!!!
損得計算から見る判断の妥当性
この打牌が得なのか損なのかを、おおまかな計算で考えてみよう。小林がオリてノーテンとした場合、寿人の一人テンパイとなって小林は1000点を払うこととなる。仮にオリ選択を5回やれば平均はマイナス1000点。一方、4索を押して通ったときには小林は1500点のテンパイ料がもらえる。もちろん子にホウテイロンをされると厳しいが、放銃時打点を8000点と仮定し、5回に1回ロンされるとして計算すると、(1500+1500+1500+1500-8000)÷5 = マイナス400点。よって「-1000」と「-400」の比較で、放銃率20%の牌なら押した方が得だと分かる。放銃率33%なら(1500+1500-8000)÷3≒-1666で、オリた方がよい。では4索の放銃率は?無筋は6本:2-5萬、4-7萬、2-5筒、3-6筒、1-4索、4-7索。寿人の待ちがリャンメンと仮定すると4索は2本にかかるので6分の2で33%。しかし実際にはカン2索リーチやドラ2筒の愚形テンパイも考えられ、寿人は7筒をトイツ落とししているが愚形待ちの可能性も残る。そのため4索の放銃率は33%からやや下がる程度で、20~33%の間くらい。中間なら損得はプラスマイナスゼロ付近。小林は試合後のインタビューで「ギリギリ」と言っていたが、際どいラインだと分かっていること自体が素晴らしい。この舞台が「2本勝負のトーナメント戦での親番」なら押す選択も十分にある。
結果と今後
寿人の待ちは4-7萬であった。最後まで攻めて繋いだ親番。小林剛は次の局に4000は4200オールをツモアガリ、大量加点に成功する。この半荘はトップはとれなかったものの、素点のある2着となった小林。2半荘目も余裕のある立ち回りで2着をゲット。トータル2位となって勝ち上がりを決めた。嬉しそうな小林。「U-NEXT Piratesの船長」から小林を知ってファンになった方も多いだろう。その大勢の方たちは、小林が船を降りることになろうと、これからも「麻雀プロ」小林剛を応援する。Mリーグでの活躍は次のステージにも繋がっていく。そしてこれからも、「船長」としての8年間が色褪せることはない。今日勝ったことでMトーナメントでも引き続き小林の麻雀を見ることができる。ファンは喜んでいるに違いない。小林は2024年のMトーナメントの覇者でもある。史上初、二度目の優勝を果たして、自ら盛大に花道を飾ろうではないか。(C)Mリーグ (C)AbemaTV,Inc.



