真夏の熊本地震、冷房不足で避難所が酷暑 熱中症続出
真夏の熊本地震、冷房不足で避難所が酷暑

今回の熊本地震は、国内で初めて真夏に最大震度7を観測する地震となった。多くの被災者が厳しい暑さの中での避難生活を強いられ、冷房設備が不足する避難所もあり、体調不良を訴える人も相次いでいる。最高気温40度以上の酷暑日も予想される中、暑さ対策が急務となっている。

体調不良訴え相次ぐ

県内最大の約3700人が避難所に身を寄せる熊本県八代市。30日の最高気温は35.2度に達した。「日中は地獄の暑さ。夜も暑さで寝て起きての繰り返し。水が止まってお風呂も入れない」。指定避難所の市立鏡小体育館に避難する同市の臨床検査技師の名島淳さん(50)は、うちわをあおぎながら表情を曇らせた。

28日の地震で自宅が倒壊し、家族4人で避難したが、同体育館に備え付けの冷房設備はなく、業務用扇風機が3台あるだけ。約80人いる避難者は風を求めて、出入り口や小窓近くで休んでいるという。

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県内では30日午後2時時点で、406か所の避難所が開設され、計9450人を受け入れている。だが、冷房設備が元々なかったり、停電で使えなかったりする施設も一部にある。宇城市の末松直洋市長は29日の県災害対策本部会議で「一番困っているのが水、電気。エアコンがなく蒸し風呂状態だ」と訴えた。

県は、冷房設備が不足する避難所に移動式クーラーや電源車を順次送っているほか、政府も航空自衛隊機でクーラー約300台を熊本へ空輸するなど「プッシュ型支援」に力を入れる。だが、冷房設備がある避難所でも、猛暑で体調不良になる避難者が相次いでいる。30日、熊本市内の避難所を巡回していた公衆衛生医師の渕上史さん(49)は「高齢者を中心に熱中症や脱水症状が疑われる避難者が多い」と話した。

避難所の冷房設置率は3割

熊本県は2016年4月の熊本地震を踏まえ、地域防災計画を毎年のように改定し、避難対策も練り直してきた。市町村向けの避難所運営マニュアルで「エアコン、スポットクーラー、扇風機、うちわ等を確保」と求めてきたが、エアコンや発電機などは予算がかかり、真夏の対策はなかなか進んでいなかったという。県の担当者は「起こったら困ると思っていたことが現実になってしまった」と話した。

真夏の暑さが年々厳しさを増し、熱中症のリスクが高まる中、避難所の暑さ対策は全国的に進んでいない。文部科学省によると、指定避難所になっている公立小中学校の体育館・武道場でも冷房設置率は33.1%(熊本県は20.9%)にとどまる。

跡見学園女子大の鍵屋一教授(災害福祉)は「夏の大災害は未経験のため、自治体では十分な対策が取られていない。夏場は食中毒や衛生環境悪化のリスクもある。自宅に『在宅避難』する高齢者や、対応にあたる自治体職員の暑さ対策も欠かせない」と指摘する。

暑さ回避に車中泊、物資支給も課題

震度7を2回観測した2016年の熊本地震では、余震を恐れて車中泊を選択し、健康悪化を招く被災者が続出した。今回の地震では、避難所の冷房が十分でないなどの理由で車中泊をする人が相次いでいる。八代市の介護職、金田満博さん(58)は、妻と子どもの家族5人で、避難所となっている小学校の敷地内で車中泊をしている。避難所内はエアコンがないためだ。「これだけ暑いと熱中症の心配もある。いざという時に備えて、空調設備をつけておいてほしい」と訴えた。

震度7の揺れで自宅が傾いた氷川町の農家、浜田康浩さん(64)と妻のはるかさん(61)は、空き巣に入られる懸念もあり自宅前で車中泊を続けているが、「じっくり眠れない」とこぼした。

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10年前の熊本地震では、相次ぐ余震や避難所の混雑を理由に車中泊をする被災者が少なくなかった。長時間同じ姿勢でいることで血栓が生じる「エコノミークラス症候群」を発症し、体調を崩して亡くなる人も相次いだ。熊本県は同地震を教訓に、血流を良くする弾性ストッキングの備蓄を開始。地域防災計画を改定して、車中泊避難用の駐車スペースを事前に決め、支援方策を検討するよう市町村に促した。これを受け、熊本市は駐車場計300台分を用意。宇城市は、避難所駐車場での車中泊に対し、避難所内の避難者と同様に物資を支給できるよう運用を改めた。

だが、今回の地震では十分に対応できていない自治体もある。八代市は市内の公園を車中泊用に開放することを決めているが、「職員を割く余裕がなく、車中泊の把握や物資の支給はできていない」(担当者)という。

車中泊支援は24年の能登半島地震でも問題となり、内閣府は同年6月に支援の手引を策定。水や食料などの支援を行うほか、駐車スペースの区分けや車両が通る場所の確保などを事前に検討するよう求めた。だが、車中泊対策は全国でも途上にあるようだ。読売新聞が3~4月、全国の主要109自治体を対象に行った車中泊避難の調査では、手引がなかったり、車中泊用のスペースを確保していなかったりする自治体はそれぞれ6割超に上った。用地確保が困難との声が多く、優良事例の共有や車中泊支援に関わる研修の開催などを求める声も上がった。