技能実習生の逸失利益「67歳まで日本水準」判決 専門家「画期的」
技能実習生の逸失利益「67歳まで日本水準」判決

技能実習生として働いていた中国籍の40代女性の労災事故をめぐる訴訟で、千葉地裁が、事故がなければ得られたはずの「逸失利益」を、日本での賃金水準をもとに67歳まで算定する判決を出していたことが分かった。専門家は「能力や経験、キャリア形成の実態を丁寧に見て日本で働き続ける可能性が高いと判断している。画期的な判決だ」と話す。

判決の概要と背景

外国人の逸失利益の算定をめぐっては、最高裁が1997年、来日目的や在留資格の内容、在留期間などを踏まえて日本での就労可能期間を判断するとの基準を示している。

千葉県弁護士会の外国人の権利委員会の立花朋委員長によると、過去の多くの裁判例では技能実習生が日本で働く期間は数年とされ、その後は母国で働くことを前提に算定されてきたという。

事故の経緯と判決内容

大寄久裁判長による判決は9月4日付。会社の安全配慮義務違反を認めて、約960万円の賠償を命じた。

原告の女性は2020年4月から千葉県習志野市の金属加工会社の工場で技能実習生として勤務。22年4月、金属板を加工するプレス機の作業中、左手を刃に巻き込まれ、人さし指を切断するなどのけがを負った。

算定の考慮要素と今後の見通し

判決は、逸失利益について、女性が事故後に「特定技能1号」の在留資格で富山県の介護事業所で勤務していること▽介護福祉士の資格取得に向けた訓練を受けていること▽日本語能力試験で2番目に難しい「N2」を取得していること、などを考慮。今後、在留期間の更新に上限がない在留資格「介護」を取得し、日本で働き続ける可能性が高いとして、67歳までの逸失利益を日本の賃金水準をもとに算定した。

長年にわたり外国人労働者の問題に取り組んできた指宿昭一弁護士は、今回の判決について「日本での就労可能期間を短くとらえる従来の認定では、企業側の負担する賠償額は小さくなる。今回の判断は、雇用する側の安全管理の改善を促す点でも意義がある」と指摘する。

被告の会社側は判決を不服として、東京高裁に控訴している。