羽田空港アクセス線、シールドマシン「はるとん」公開 11月16日から掘進開始
羽田空港アクセス線、シールドマシン公開 11月16日掘進開始

JR東日本が進める「羽田空港アクセス線(仮称)」整備事業で、東京貨物ターミナル駅から羽田空港の地下に至るシールドトンネル工事が11月16日に始まる。工事に先立ち、11月6日に立坑で報道公開が行われ、掘削に使うシールドマシンと、シールドトンネルまでのアプローチとなる開削トンネル部分が公開された。

首都圏と羽田空港を結ぶ新路線

「羽田空港アクセス線(仮称)」は、首都圏鉄道ネットワークの多方面から羽田空港へのアクセスを実現するプロジェクト。田町駅付近から分岐する「東山手ルート」(7.4km)と、東京貨物ターミナル駅から羽田空港方面を結ぶ「アクセス新線」(5.0km)の計12.4kmを整備し、2031年度の開業を予定している。構想には、大崎方面の「西山手ルート」、新木場方面の「臨海部ルート」も含まれる。

現在、東京駅から羽田空港へ鉄道で行く場合、東京モノレールまたは京急線への乗り換えが必要で、所要時間は約30~40分。開業すれば東京駅から羽田空港まで約18分となり、大幅な短縮が見込まれる。特に宇都宮線、高崎線、常磐線の各方面から羽田空港への直通が可能になる。

「東山手ルート」は、田町駅付近で東海道本線から分岐し、旧大汐線および東京貨物ターミナル駅を経由して「アクセス新線」区間へ至る。1998年から休止している大汐線の橋梁・高架などを活用して改修・改良を行う。東京貨物ターミナル駅周辺では、JR東日本が保有する用地に留置線、保守基地線、着発線などを整備する。

シールドマシン「はるとん」の概要

「アクセス新線」は、東京貨物ターミナル駅から地下区間に入り、公共施設、運河、道路の下をシールドトンネルで通過して羽田空港新駅(仮称)に至る新設区間。JR東日本は空港外の2.3kmの工区を担当し、2024年度から工事に着手、立坑構築や開削トンネル区間の掘削などを行ってきた。

公開されたシールドマシンの愛称は「はるとん」(Haneda airport Access Line Tunnel)。直径11.8m・奥行12.7mで、外径11.6m・内径10.6mのシールドトンネルを構築し、そこに複線を通す。トンネル下部から約3mの高さを線路面とし、その下に高さ2.2mの避難空間と保守空間を設ける。

掘進が始まると、後ろの壁をジャッキで押すことでマシンが前進しつつ、先端で回転する金属のカッターが地中を掘削する。マシン後方では、セグメント(RCセグメント)のリングを組んでシールドトンネルの壁とし、その繰り返しで地中を進んでいく。

JR東日本工区のシールドトンネルは、幅1,800mm・厚み500mmのセグメント9ピースで1つのリングを組み、その総数は1,263リングに及ぶ。順調に進めば1日あたり10m、セグメントのリング数にして5~6リング分進むという。

泥水式とロスゼロ工法を採用

掘進方法は泥水式を採用。シールドマシンの後方約1kmに設けたプラントヤードから、送泥管を通して掘削面へ泥水を送り込み、削られた土砂を泥水に巻き込んで排泥管からプラントヤードへ送り返し、適切な方法で処理する仕組み。これにより、マシン内部の作業環境をより安全に保つことができる。

「はるとん」の掘進にはロスゼロ工法を採用し、掘進と同時に下半分5ピースのセグメントを組み立てる。セグメントを組んでいる部分のジャッキは一時的に推進力がなくなるものの、上半分のジャッキの圧力を自動制御することで、マシン全体の推進方向を維持する。1段階掘進したタイミングで1リングを組む通常のシールド工法と比べて、時間のロスを抑えられるため、いち早くトンネル完成をめざせるとのこと。

立坑内では、シールドマシンの後方に連結する後続台車の準備も進められている。取材時点で5台連結され、掘進開始時には10台編成(約100m)となる予定。これらの台車にシールドマシンの運転管理室、制御盤、作動油タンク・水タンクなどを搭載する。セグメントは立坑から搬入し、搬送台車に載せてシールドマシンまで搬送する。

開削トンネルと新駅の計画

地上からシールドトンネルに入るまでの約200mは、アプローチとして開削トンネルを設ける。地上側にU型擁壁、シールドトンネル側にボックスカルバートを構築。この部分の勾配は34.5パーミルとされ、最も深くなる部分の深さは約12mになる。34.5パーミルの足場は、人間の足だと急坂には感じないが、鉄道車両にとってはかなりの急勾配といえる。

取材時点で、U型擁壁の一部箇所にコンクリートの壁を設けていた。工事中のため、現在は天井に覆工を設けており、完了後に撤去される。ボックスカルバートには天井も設けられ、四角い構造物となって、列車は完全に隠れる。取材時点では、コンクリートで覆われていない鉄筋のほうが多かったが、今後の工事でコンクリート擁壁の構築が進むと考えられる。

開削トンネルでのアプローチ後、シールドトンネル内は最小曲線半径R500・最大縦断勾配33.0パーミルとなる。京浜運河の下を通って最大深度50mに到達し、地上付近まで上がって羽田空港新駅(仮称)に至る。新駅は羽田空港第2旅客ターミナルと近い位置に設置され、地下1階に1面2線の島式ホームを建設予定。新駅から第2旅客ターミナルまで、高低差の比較的少ない移動になると予想される。

なお、空港島内の駅やトンネルの躯体といった基盤施設は、国土交通省関東地方整備局が空港整備事業として整備する予定。両端から掘り進めたシールドトンネルは、京浜南運河付近の地下40m地点で地中接合するとのこと。

2031年度開業に向けた取り組み

立坑内の見学後に囲み取材が行われ、JR東日本東京建設プロジェクトマネジメントオフィス羽田アクセスプロジェクトセンターのセンター長を務める山崎聡氏(崎は「たつさき」)、マネージャー統括の小泉秀之氏が対応した。山崎氏はシールドマシンの発進を「アクセス新線」区間整備の大きな節目とし、関係者への感謝を示した上で、「これからシールドトンネル工事2.3kmを進めてまいります。安全を第一に工事を進めます」と挨拶した。

改修が多い「東山手ルート」に対し、「アクセス新線」はこれまで鉄道がなかった場所に路線を新設。シールドトンネルであり、運河の下を通る海底トンネルでもある。JR東日本としても、いままで経験のない、技術的にも新たなチャレンジとして、事前検討を進めてきた様子。それが結実する工事がいよいよ始まるということで、今回のシールドマシン発進を大きな節目ととらえているようだった。

「羽田空港アクセス線(仮称)」開業後の利便性について、現在のJR東日本の鉄道ネットワークと羽田空港をダイレクトにつなぐことを大きなメリットとし、「お客様にとってもですが、首都・東京の国際競争力の強化にも資する、あるいは羽田空港の機能強化にも寄与できるのではと考えています」と山崎氏は述べた。

JR東日本工区のシールドトンネル工事は11月16日に開始予定とされ、工期は順調に進めば約1年を見込んでいるとのこと。空港島内の基盤施設工事は国土交通省の担当だが、その後の鉄道施設(軌道・電気関係など)についてはJR東日本が工事を行うとしている。