「前にも話したと思いますが」「聞いていなかったんですか?」——。上司が何気なく放った言葉に、若手社員の心が折れてしまうことがある。心理カウンセラーでヒューマン・ギルド研修部長の永藤かおる氏は、部下との信頼関係を育てるにはダメ出しも「伝え方」が大切だと指摘する。
永藤氏自身、かつて会社全体の大きな会議で、自分がつくった資料を本社や各支社、工場の人々が眺めている姿を目にし、初めて「みんなの役に立てた!」という実感が湧いたという。その喜びは今でも忘れられないと振り返る。
若手社員の心を折らないために
この経験からも分かるように、人が成長するには「自分はチームの役に立っている」という感覚が欠かせない。例えば、ファイル整理の仕事でも「◯◯さんが丁寧に整理してくれたおかげで、みんなが使いやすくなりました。とても助かっています。ありがとう」と具体的に伝えられれば、相手は自分の貢献を実感できる。「共同体感覚」はこうした小さな自信と貢献感の積み重ねによって育まれ、メンバーの成長意欲や主体的な行動につながっていく。
口調を変えるだけで、部下は動く
「教える」際に忘れてはならないのは、同じ内容でも口調一つで相手が受け取る印象が大きく変わるという点だ。例えば「コピー取って!」はきつい言い方に聞こえる。一方「コピーを取ってください」は丁寧に聞こえるが、実際には相手に有無を言わせない「命令口調」だ。言葉の丁寧さはあっても、言われた側は威圧的な圧迫感や反発を感じてしまう。
では「コピーを取ってもらえますか?」はどうか。これは依頼口調で「お願い」として届くため、強制感がなく、相手は素直に受け止めて行動しやすい。伝える内容が同じでも、口調しだいで受け取る心理は大きく変わるのだ。
もちろん、常に依頼口調がよいわけではない。時と場合によっては命令口調が適切なこともある。例えば医療現場で緊急の場合、「◯◯していただけませんか。その後、△△してもらえると助かります」とは言わない。「◯◯して。次に△△」と端的に言うほうが適切だ。



