元海上自衛隊の数学教官で、下関市立大学准教授の佐々木淳氏が、動画教材を見ても成績が伸びない理由を解説している。
佐々木氏は自衛隊時代、教育部隊で動画学習が導入された時代を経験したが、試験で理解度を確認すると期待したほどの成果は得られなかったという。現在、多くの人が動画学習を試しては失敗し迷走していると指摘する。
「ゴンドラ猫の実験」が示すもの
その理由を考えるうえで参考になるのが、1963年に行われた「ゴンドラ猫の実験」だ。2匹の子猫に同じ景色を見せ、一方は自分で歩きながら、もう一方はゴンドラに乗ったまま景色を見るだけという条件で比較した。結果、自分で動いていた猫は周囲に適切に反応できたが、見ていただけの猫は同じ行動ができなかった。
この実験は「見るだけ」では学習が定着しにくいことを示している。動画を見て満足するだけでは、試験本番で問題を解く力にはつながらず、ノートに書く、計算する、音読するといった身体行動が伴わないと結果に結びつきにくいという。
「学習の錯覚」というパラドックス
2019年の研究では、講義を受けるグループと自ら問題を解くアクティブラーニングのグループを比較。試験の結果がよかったのはアクティブラーニングのグループだったが、「学べた気がする」と感じたのは講義形式のグループだった。つまり「満足度の高い勉強は成果が低く、満足度の低い勉強は成果が高い」というパラドックスが起こった。この現象は「学習の錯覚(illusion of learning)」と呼ばれる。



