企業がどれだけ研修に予算を投じようと、それが部下の成長に貢献するのはわずか10%。残りの90%は、上司の関わり方と、任される経験の質と量が決める。
ここで冷徹に問い直す必要がある。「あの子にはまだ早い」と判断し、機会そのものを取り上げているとき、上司は部下の成長の“7割”を、自分の手で削り取っているのではないだろうか。
研修そのものが無意味なわけではない。ただし、その効果は限定的で、育成の主役はあくまで日々の業務の中で任される経験にある。
AIが加速する「未経験のまま歳を取る」若手の危機
問題は、この構造が現代においてより深刻化している点にある。Googleのサジェスト、Instagramの「おすすめ」、TikTokの「For You」、そしてChatGPT。今の若手世代は、“最適化された世界”で育ってきた。「検索すればすぐ出てくる」「動画を見れば理解できる」「AIに聞けば文章ができる」――そんな環境が、彼らにとってのデフォルトである。
彼らは「探す」より「出てくる」ことに慣れている。失敗しながら学ぶよりも、“一番効率的で失敗しにくい方法”を先に参照することを優先する。“考える”という行為自体が、AIやアルゴリズムに半ば外注されてきた世代なのだ。
この環境で育った若手に、「とりあえずやってみよう」「自分で考えてみて」と伝えても、多くはピンと来ない。前例のない仕事、正解のない課題は、本質的にストレスフルなものとして映るからだ。
「背中を見て育て」は最も残酷な育成放棄
だからこそ皮肉なことに、いま上司が意識的に“経験の機会”を設計しない限り、若手は未経験のまま年次だけを重ねていくという事態が、あちこちの職場で進行している。
かつては黙っていても現場で“揉まれた”時代の育成モデルは、もはや機能しない。「背中を見て育て」は、いま最も残酷な育成放棄である。



