全国の公立小中学校で、プールの老朽化や教師不足により水泳の授業が激減している。小学校によっては、プールの授業が2回だけというケースもあるという。
老朽化と予算不足が進める「水泳不可」の学校
教育系メディアの編集者は「全国の公立小中学校ではプールの老朽化が進み、水泳不可の学校も増えています」と話す。改修したくとも予算を確保できない自治体があり、人手不足や過重勤務の問題から、水泳を担当できる教師も減っている。
一部の自治体は授業をスイミングスクールに委託するようになったが、こちらも予算を捻出できなかったり、学校の近くに適切な施設がなかったりと、教育委員会は苦労しているという。
そもそも、子どもに泳ぎを教えられる保護者は少なく、夫婦ともにカナヅチという家庭も珍しくない。水泳の授業が激減する中、子どもを泳げるようにするにはスイミングスクールに通わせるしかないのが現状だ。都心のスイミングスクールは盛況だが、金銭に余裕のない家庭は水泳と無縁になる可能性がある。編集者は「すでに学校だけで『泳げる』ようにするのは難しい時代になっています」と指摘する。
「泳げない生徒は不登校になるほどのプレッシャー」
こうした現状に危機感を抱き、プールの授業をなるべく確保するよう活動しているのが、公明党の下野六太参院議員だ。下野氏は福岡県の中学校で保健体育の教師として勤務し、全生徒が1000メートルを完泳できる教育メソッド「しもの式体育」を確立。国会でもプール問題を精力的に取り上げている。
下野氏は「水泳の授業は、他のスポーツとは明確に異なる」と語る。足が速くなくても、縄跳びが苦手でも、サッカーが下手でも、生徒が精神的に追い詰められることはほぼない。だが泳げない生徒は、体育の水泳が原因で不登校になるほどのプレッシャーを感じるという。「彼らは泳いでいるのではなく“溺れかけている”ので、水の中で死ぬのではないかという恐怖を常に感じているのです」と話す。
「しもの式体育」と人間の生命力
元サッカー選手でスポーツ万能の下野氏も、水泳のクロールだけは苦手だった。それが「しもの式体育」の原点となった。
下野氏によると、水中では心拍数を上昇させないことが大切で、「フォームを気にせず、水に浮かびながら、ゆっくりと泳ぐ」ように指導する。すると、生徒全員が1000メートルを泳げるようになるという。
全員が1000メートルを泳げるようになった段階で生徒にレポートを書かせると、「次は苦手な英語を頑張ります」など、苦手分野の克服に意欲的になる。下野氏は「水泳の授業は人間が根源的に持つ『生命力』を育む」とし、できることなら屋内プールで実施できる環境を整えてほしいと願いを語っている。
小学校におけるプールの授業は「泳げる」「泳げない」以上に大切なものを育んでいるのかもしれない。



