子どもたちに人気のプール授業だが、教員個人への負担が大きいことが課題となっている。中部大学現代教育学部准教授の樋口万太郎氏は、水の事故の多くが静かに、あっという間に起こると指摘し、監視の大前提として「常に全員が見えている」ことが必要だと強調する。
洗濯機と自由時間に潜む危険
樋口氏は、流水を作る「洗濯機」と呼ばれる遊びや自由時間に特にリスクがあると警告する。洗濯機では流れによって立ち位置が刻々と変わり、背の低い子ほど足を取られやすく、波立つ水面の下は見えない。教員が何人立っていても、回り続ける集団の中の特定の1人を追い続けることは難しいという。
「そこまで取り上げたら子どもがかわいそうだ」という声に対して、樋口氏は「かわいそう」と「危ない」は天秤にかけてはいけないと述べる。楽しさは別のかたちでいくらでもつくり直せるが、命だけは一度失われたら取り返しがつかないと強調する。過去には学校プールでの死亡事故が複数発生しており、2024年には高知市の小学校の水泳授業で4年生の男児が溺れて亡くなっている。
「プールの水」止め忘れという恐怖
樋口氏は、自身が小学校教員時代にプール担当だった際、水の止め忘れを防ぐため、職員室のドアやパソコンの前、ホワイトボードの端、手の甲に黄色の付箋を貼る対策をしていたと明かす。しかし、止め忘れるのは教員がだらしないからではなく、一日の業務が健康観察、授業、ケンカの仲裁、保護者対応、提出物の確認、給食の見守りなど判断と対応の連続であるためだと説明する。
「属人化」されすぎている構造を変えるべき
樋口氏は、プールの安全管理が教員個人の頑張りに丸投げされている「属人化」構造を問題視する。水の止め忘れで自腹を切るリスクや、自由時間の監視負担など、システムとしての改善が必要だと提言する。楽しさを別の形で提供しつつ、安全管理を組織的に行う仕組みづくりが急務だと訴えている。



