兵庫県三田市にある三田学園中学校・高等学校で、今年度から河原幸雄氏が校長に就任した。河原校長は副校長時代から、生徒の「やらされ感」をなくすため中間考査を廃止し、成績評価を観点別評価へ転換するなど、教育改革を推進してきた。校訓「質実剛健・親愛包容」を土台に、「生徒主体」の新しい学校作りを構想している。
改革の背景と経緯
河原校長は1990年に母校である同校の社会科(世界史)教員となり、30年以上教壇に立ちながら、学年主任、入試広報部長、副校長を歴任し、2026年4月から現職に就いた。また、長年にわたり卓球部顧問を務め、中高とも全国大会に導いている。
河原校長が教育方針で大切にしているのは、生徒に「やらされ感」を持たせず、自分でやりたいと思って活動してもらうことだ。以前は教員主導で指示を出すことが多かったが、副校長を務めた直近の4年間で考え方が大きく変わったという。当時の眞砂和典前校長から、部活動で教員が中心に立ち、生徒が号令に従って1列に並ぶ様子を見て「これは誰が主役の活動なのか」と問いかけられたことがきっかけだった。
この問いかけにより、生徒自身が考え、話し合い、判断する機会を教員が奪っていたのではないかと気付き、学校教育の「当たり前」を見直し、教員が管理し指示する学校から、生徒が自ら考え、選択し、行動する学校へと転換した。この4年間で、中間考査を廃止して単元テストや振り返りを導入し、成績評価も他者との比較ではなく「自分がどれだけできたか」という観点別評価を取り入れた新しい方法へとシフトした。
部活動と学びの変化
部活動の指導面では、以前は監督がメニューを考え、生徒は指示に従うだけだったが、現在は「探究的な部活動」を目指し、生徒自身がメニューを考える方向へ変わりつつある。強豪の野球部では、練習後に生徒たちだけで集まり、プレーについて話し合い、監督に意見を求めるスタイルが生まれている。
河原校長は、勉強や部活動において、今はそれらを「熟成」させるタイミングだと考えており、新たなものを追加するのではなく、今あるものを定着させたいと話す。
生徒主体の取り組み
改革に伴い、一部で「自由=何をしてもいい」と勘違いする生徒が出る懸念もあったが、校訓である「質実剛健・親愛包容」の土台を大切にし、人に迷惑をかけない、ルールやマナーを守る、他者を思いやるといった厳しさや基盤があってこその自由であり主体性だと伝えている。
今年度導入したオリジナルプログラム「CONNECT」は、英語でグローバルコンピテンスを身に付けられる仕掛けで、ネイティブと日本人の教員が連携し、中1では日本語も交えながら、中2以降はオールイングリッシュで授業を進める。
また、オープンスクールでは、中学生が自ら「体験授業をやらせてください」と企画を持ち込み、総合学習で学んだ防災の知識を小学生に伝える講師を務めた。JCA(日本文化研究部)の生徒たちは、パウンドケーキの配合を研究し、地元の洋菓子店にコラボレーションを持ちかけ、実際に商品化して販売までやり遂げた。
学力への影響とメッセージ
保護者からは学力への影響を心配する声もあるが、河原校長は「探究的な学びと学力の向上はトレードオフの関係ではない」と確信しており、主体的に学ぶ姿勢が学力向上につながると考えている。実際、改革当初は「テストが減って大丈夫か」と心配されたが、生徒たちは自ら学ぶスイッチが入り、学力も維持・向上しているという。
河原校長は受験生や保護者に向けて、「本校はただ大学に合格するためだけの学校ではありません。広大で緑豊かな環境の中で、勉強、部活動、課外活動、そして人との出会いを通じて、ワクワクするような学びができる場所です」と語り、「確かな学力」と「文武両道」の土台を固めた上で、生徒一人一人が自分なりの「3本目の柱」を見つけてほしいと願っている。



