滋賀県長浜市余呉町で、元カウンセラーの唐子恵子さん(70)が廃校となった丹生小学校を活用し、不登校児童向けの寄宿型支援施設「子ども自立の郷ウォームアップスクールここから」を開校するまでの奮闘が明らかになった。唐子さんは長浜市教育委員会の適応指導教室で12年間指導主事(カウンセラー)を務め、不登校児を学校に戻すための宿泊野外活動の効果を実感。公的機関では珍しい寄宿型施設の運営を目指した。
夫の死と夢への転機
2005年夏、49歳の誕生日前日に夫が急逝。息子や実母から「やりたいことをして生きたらいいよ」と後押しされ、夢だった施設運営への決意を固めた。同年3月に廃校となった丹生小学校に目をつけ、知人の紹介で当時の余呉町長に直談判。「個人には貸せないが、教育に使ってもらえるなら」と許可を得た。
「心から」「心と身体は大切」「個々から」「子育て、心育て、こころざし育て」――唐子さんは学校や家庭に戻るために最も大切なものを考え、施設名を「ここから」と命名。2005年冬のことだった。
住民説明会で反対の声
2006年4月の運営開始に向け、住民説明会を開催。100人以上の住民から「学校にどうやって住むの」「畑が荒らされたりしないか」「不登校の子どもにどう声をかけていいのかわからない」と不安が噴出。男性住民が「反対や。他にも学校はあるだろう」と追い打ちをかけた。
応援していた町長も「一人でも反対がいる限り、進めるわけにはいかない」と説得を促した。数日後の再説明会では「不登校の子どもは暴れるんじゃないか」「よそ者が何かやらかすかもしれない」と前回以上の厳しい声が上がった。唐子さんは毅然と「不登校の子どもも親も普通の人間です」と反論した。
一軒一軒の説得と承認
それから毎晩、一軒一軒を訪ね、思いを伝えた。「なんでわかってもらえないのだろう」と悩む一方、地元の人にとって学校が大切な思い出の場所であることを再確認した。3か月後、唐子さんの電話が鳴った。「認めるけど条件がある」――説明会で「反対」と叫んだ男性からの電話だった。条件付きながら承認を得て、施設開校への道が開けた。



