広島県尾道市の2026年3~6月におけるアサリ漁獲量が2.42トンに達し、前年同期の1.01トンから2倍以上に増加したことが市のまとめで明らかになった。ピーク時から激減し、漁業者の高齢化や人手不足が深刻化する中での“豊漁”は、平均年齢70歳代の漁業者らによる地道な環境保護活動の成果だ。
干潟での地道な作業が実を結ぶ
5月末の午後、潮が引いた尾道市浦崎町の高尾干潟では、浦島漁業協同組合の9人がしゃがみ込み、貝かきと呼ばれる道具で砂を掘り起こしていた。アサリに当たる「カチッ」という音があちこちで響く中、組合員たちは「今年はおると思うたら休憩もせんわ」「何年も辛抱したんじゃけぇ、こがぁな時もないとな」と語り合い、腰の痛みを訴えながらも明るい表情を見せた。1時間半かけて採取したアサリをふるいにかけ、計60キロを台車に載せた。
藻場再生と食害防止ネットの効果
浦島漁協は2023年から尾道市と協力し、藻場の再生に取り組んできた。毎年5月に干潟でアマモの種が詰まった花枝を採取し、海で熟成させた種を11月に栄養分の窒素やリンと共にまく。アマモが育って藻場が形成されると砂の移動が抑えられ、アサリや餌となるプランクトン、その他の魚介類が定着・繁殖しやすくなるという。
また、チヌやエイなどの捕食からアサリを守るため、干潟に食害防止用ネットを設置する作業も約10年間継続してきた。1センチ角の網目には他の貝や藻がびっしりと付着し、重みでめくり上げるのも一苦労。シーズン終了後にはネットを洗浄し、翌春まで再び被せる作業を繰り返している。
高齢漁業者の奮闘と課題
松若隆博組合長(75)は「尾道のアサリは味がいいと言ってくれる人がいる以上、絶やしたくないと皆頑張っている」と話す。一方で、年々体力的な負担が増す中、「昔のように安くは売れず、高過ぎると消費者が離れる。1キロ当たりの価格設定が難しい。販路を広げるかどうかも輸送費の問題で悩ましい」と課題を挙げる。現在はシーズン中に数回、市内の農産物直売所などに出荷するのが精一杯だ。
市のまとめと今後の展望
尾道市農林水産課によると、2025年は春に貝毒が発生し一時出荷が停止。支所を含む市内4漁協の漁獲量は計1.01トンにとどまった。2026年は、干潟の耕運やネット設置に励んだ尾道東部漁協山波支所が約10年ぶりに一般向けに出荷を複数回実施し、全体量を押し上げた。
同課は「ネットを設置していない場所にはアサリがほとんどいなかった」と指摘し、ネットの効果を認めるものの、目標の300トンにはほど遠いとしている。今後はネットの設置面積拡大など粘り強い対策を続ける方針で、担当者は「そのために一定の人手が要る。例えば企業の参入や市民ボランティアだ。エコツーリズムなどを組み合わせ、多くの人を巻き込む仕掛けをつくりたい」と語った。



