舘ひろし主演の映画『免許返納⁉』が話題を集めている。運転好きの古希を迎えた主人公が、仕事の関係で免許返納を迫られるコメディだ。佐賀大学ライフロングモビリティ研究・支援講座の堀川悦夫特任教授は「運転をやめることは、『自分の一部を失うこと』と感じる高齢者も少なくない。免許を返納する前にできることがある」と話す。
高齢ドライバーが運転を続けたい理由
高齢ドライバーと話していると、「運転はできれば続けたい」「やめるのは不安だ」という声が少なくない。その背景には、単なる移動手段の確保にとどまらない、より深い意味があることが見えてくる。
実際、医療現場でも、「運転が好き」「気晴らしになる」「一人の時間を持てる」「長年運転してきて問題はなかった」といった声が聞かれる。「家族に頼るのは気を使う」「バスもタクシーも不便」といった現実的な事情に加え、「自由に動ける」という感覚そのものが、その人の暮らしや自立心を支えているケースも多い。
運転は自己効力感を支える行為
どこへでも行けるという万能感は、個人の自由意志の証明であり、家族を乗せて車を走らせた経験を持つ世代にとって運転席は、家族に対する「責任と権威」の象徴であることも少なくない。
心理学的に見ても、運転は単なる技能ではなく、自分で判断し、操作し、目的地にたどり着くという一連のプロセスを通して「自分はまだできる」という自己効力感を支える行為だ。長年ハンドルを握ってきた人にとって、車は移動の道具というよりも、身体の延長のような存在であり、運転をやめることは「自分の一部を手放す」ように感じられることさえある。



