中央アルプス・木曽駒ヶ岳の中岳(2925メートル)で7月4日、ニホンライチョウの親子が確認された。市民団体「中央アルプス雷鳥サポーターズクラブ」代表の北村忍さん(65)が双眼鏡で見つけ、撮影に夢中で規制ロープをまたいでいた登山者を注意した。北村さんは週末を中心に観察を続け、環境省の調査に協力している。
復活事業は順調、推定328羽に
1969年の目撃を最後に全滅したとされる中央アルプスのライチョウは、2020年に始まった環境省の復活事業が順調に進み、今季は速報値で131(前年速報値83)のなわばりを確認。推定生息個体数は328羽(同190羽)となった。
復活のきっかけとなったのは、2018年に登山者に撮影されたメスのライチョウだ。関係者の間で「飛来雌」と呼ばれ、個体識別のため「赤赤赤赤」の四つの足輪を着けていた。これまでに19羽のヒナを育て、昨年時点で野生下のメスとしては最高齢の11歳と推定されたが、昨秋以降、姿を確認できておらず、死んだとみられている。
復活事業を指揮する信州大名誉教授の中村浩志さん(79)は「飛来雌と一緒に中アのライチョウの復活を進めてきたという思いがあり残念だが、寿命を全うしたと思っている。その子供たちが今、中ア全体に分散し、また子供を作っている」と話す。
乗鞍岳では減少続く
一方、ライチョウ研究の中心となってきた乗鞍岳(3026メートル)では、生息環境の悪化が懸念されている。2018年段階ではなわばり数が1995年以前と同じ60前後を維持し、安定的な集団と考えられてきた。飛来雌のふるさとと考えられ、中央アルプスの復活事業でも2020年に3家族を送り出すなど貢献してきた。
しかし、昨季調査でなわばり数が過去最少の33を記録。今季調査でも26(6月30日現在の速報値)と減少が裏付けられた。6月に環境省信越自然環境事務所が松本市の乗鞍高原で開いた説明会では、参加者から対策を求める声が相次いだ。減少要因はわかっておらず、環境省は7月に捕食者の生息状況を確認するため、10か所にカメラを設置するなど調査に乗り出した。
保護増殖事業の現状と課題
2014年に始まった保護増殖事業で、ケージ保護や捕食者対策などの「域内保全」と、動物園での飼育・繁殖などの「域外保全」の技術はほぼ確立された。環境省は、中央アルプスを安定した個体群とすることにより、レッドリストで2029年度に「絶滅危惧1B類」から「同2類」への引き下げと、保護増殖事業から監視段階への移行を目指している。
同事務所の福田真専門官は、乗鞍岳の状況が改善しなければ「条件はクリアできても現実的には難しいのではないか」と話す。温暖化による少雪や植生変化、シカによる餌の食い荒らし、捕食者の高山帯への進出など、ライチョウを取り巻く環境は厳しい。中村さんは「温暖化も、捕食者が高山帯に上がったのも、本をただせば人間の影響だ。高山帯の環境を人が壊したのならば人の手で自然のバランスをとるべきで、それが本当の意味での自然保護だ」と話した。



