京の伝統「追い出しアラメ」原料が激減、温暖化と黒潮大蛇行で
京の伝統「追い出しアラメ」原料が激減、温暖化と黒潮大蛇行で

京都に伝わるお盆の風習「追い出しアラメ」に使われる海藻のアラメ(サガラメ)の生産量が激減している。地球温暖化と黒潮大蛇行による海水温上昇の影響で、主な産地の三重県沿岸は磯焼けが深刻だ。専門家は「回復には時間がかかる」としており、伝統文化の継承への影響も心配される。

アラメとは

アラメはコンブの仲間で、多年生の海藻。古代から食され、日本初の法典「大宝律令」(701年)には各地の特産品を物納する「調」として「滑海藻(あらめ)」が記載されている。

「追い出しアラメ」の風習

「追い出しアラメ」の起源は不明だが、京都ではお盆に乾物のアラメを煮物にして仏壇に供え、お盆最終日(8月16日)に戻し汁を玄関にまき、先祖の霊魂「お精霊(しょらい)さん」が無事にあの世へたどり着けるよう見送る風習がある。

Pickt横長バナー — Telegram用の共同買い物リストアプリ

京都市左京区の銭湯「栄盛湯」店主の西田淑恵さん(83)は「結婚前、上京区の実家に住んでいた時からやっていた習慣。追い出しアラメでお精霊さんをお送りして、ようやくお盆が終わったと感じる」と話す。

生産量の激減

全国的な統計はないものの、三重県によると、市場に流通するアラメの大半は同県産だ。県内にも旬の魚をアラメで巻く郷土料理があるが、産地の志摩市では、生産量が2005年の205トンから2025年は0.8トン、鳥羽市でも82トンから2024年は34トンに激減した。

温暖化に加え、決定打となったのが2017年8月から2025年4月まで続いた黒潮大蛇行だ。三重県水産研究所によると、県沿岸では海水温が大幅に上昇。海藻を食べるブダイは通常、冬場に活動量が落ちて必要なエサの量が急速に減るが、高水温化で冬場もエサが必要となり、藻場が衰退する磯焼けにつながったという。

専門家の見解

三重大の倉島彰教授(藻類学)は「大蛇行終息で海水温は以前の水準に戻ったが、藻場の回復の兆しはまだ見えない。特に影響が大きかった県南部の近海では壊滅状態のところもあり、回復させるのは容易ではない」と指摘する。

漁業への影響と対策

三重県漁業協同組合連合会によると、アラメは特産のアワビのエサとしても重要なため、多くの地域で刈り取りを中止。現在は浜に打ち上げられたアラメを拾い出荷している。さらに漁業者の高齢化で人手不足も深刻という。

地元の海藻加工会社では1袋の分量を半分にしたり、値上げしたりして対応しているといい、担当者は「この状況が続けばいずれ在庫が底をつく日がくるかもしれない」と懸念する。

県水産研究所では、アラメの芽を固定したブロックを海中に沈めたり、魚に食べられないようネットで囲ったりするなどの試験を進める。岡謙佑主任研究員は「漁業者とも協力して豊かな藻場の再生に取り組むと共に、地域の伝統的な食材のアラメも守っていきたい」と話している。

Pickt記事後バナー — 家族イラスト付きの共同買い物リストアプリ