「複合」の脅威に備えよ 長周期地震動の周知は急務だ
「複合」の脅威に備えよ 長周期地震動の周知は急務だ

「令和8年熊本地震」から1カ月、「令和8年8月千葉豪雨」からは半月余が過ぎた。最大震度7の激しい揺れに襲われた熊本の被災地では、人命が脅かされるレベルの酷暑・猛暑が続いた。千葉豪雨の10日後には、関東地方で最大震度5弱の強い地震も起きている。

複合災害のリスク

地震、津波、火山噴火、台風、集中豪雨。日本の国土は絶えず自然の脅威にさらされている。近年は夏季の高温も災害と捉えなければならなくなった。熊本地震と千葉豪雨は単独で気象庁の命名基準に達する大きな災害だが、いくつかの災害が重なって被害が拡大する「複合災害」のリスクが極めて高い状況に、今の日本があることも示した。

きょう(8月30日)から9月5日までは防災週間である。防災の日(9月1日)を中心に、大規模地震などを想定した訓練や啓発イベントが各地で行われるだろう。あらゆる複合パターンに対して完璧に備えるのは不可能だが、訓練やイベントを通して防災の経験値を高め、備えを更新していくことで、複合のリスクを小さくすることはできるはずだ。

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長周期地震動の脅威

熊本地震では、日本製紙八代工場の煙突3本(110メートル、80メートル、70メートル)が損壊し、9人が亡くなった。宇城市と八代市で観測された階級4(最大階級)の長周期地震動の影響と考えられる。高層ビルや石油タンクなどの大規模建造物を大きく揺らす長周期地震動は、あまり減衰せずに遠くに伝わる性質がある。平成19年の新潟県中越沖地震では東京都庁の高層階用エレベーターが停止し、23年の東日本大震災では遠く離れた大阪の高層ビルが大きく揺れた。

たとえば、切迫度が高まっているとされる南海トラフ巨大地震が発生した場合、首都、近畿、中京の三大都市圏が最大階級の長周期地震動に襲われる可能性がある。このとき、沿岸地域では多くの人命が脅かされる津波に備え迅速に避難する必要がある。ひとつの震災ではあるが、短周期の激しい揺れ、長周期地震動、そして津波が立て続けに襲ってくる複合災害のような状況が生じる。

大津波を想定した避難訓練は何度も重ねていたのに、「複合」による被害と混乱が避難行動の妨げになって多くの人命が失われる―といった事態が起きはしないか。激しい揺れや津波に比べると認知度が低いと思われる長周期地震動は、混乱が大きくなる要因になりかねない。高層ビルなどでの家具やオフィス機器の固定は当然だが、長周期地震動の周知を図ることが重要だ。初めて経験する揺れであってもパニックに陥らずに行動できるよう、予備知識を共有したい。

民の力を生かせ

このコラムの締め切りの1週間前、避難所の環境と水の供給について書くつもりだった。が、先週(8月23日付)の「日曜に書く」(木村さやか)と、小笠原理恵さんの「新聞に喝!」に書き尽くされていた。しかも、具体的で説得力に富む。蛇足の誹りを覚悟して、少しだけ私見を書いてみる。

木村記者と小笠原さんはともに「官民連携」「官民一体の仕組み」の必要性を強調されている。筆者も同感だ。災害から国民を守るための骨格をつくるのは、政治家や役人の責務だが、その骨組みに肉付けし、血を通わせるのは一人一人の国民であり、民間の活力だと、筆者は思う。日本の防災施策では、骨格に血肉が伴わず十分に機能していないと思われる事例が少なくないような気がする。千変万化の複合災害に立ち向かうには、骨格の安定感よりも血肉の柔軟性が必要とされる局面が多々あるだろう。

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年内発足を目指す防災庁について、高市早苗首相は「産官学民の総力を結集した防災行政を進める」と述べた。「骨格ありき」の官僚的思考を脱し、民の力、血肉の柔軟性を存分に発揮できる「産官学民一体の仕組み」構築を目指してほしい。