新潟県佐渡島の冬の味覚であるカキを、夏にもおいしく味わってもらう取り組みが進んでいる。県や佐渡市の加茂湖漁業協同組合などが共同で、水温の低い海洋深層水を使ってカキを長持ちさせ、夏場の観光客に提供している。こうした養殖技術は高まってきたが、コストがかかるという課題もあり、関係者らが普及に向け知恵を絞っている。
海洋深層水で産卵を抑制
加茂湖のカキは12月~5月が主な漁期だ。しかし、水温が上昇するとカキが産卵し、身がやせてしまうため、夏場は出荷ができなかった。このため、同漁協は2023年から県水産海洋研究所佐渡水産技術センターの協力を得て、カキを長持ちさせる技術開発に着手。佐渡沖で採水した水温4度前後の海洋深層水の水槽にカキを入れ、かけ流しの状態で産卵を抑制する試みを続けてきた。
7月下旬には、佐渡市の加茂湖周辺でカキの試食会が開かれ、集まった同漁協の組合員や佐渡観光交流機構の関係者らが、海洋深層水で蓄養されたカキの食味や大きさなどを確認した。「身入りがいい」「しっかりカキの味がしておいしい」といった声が上がったという。
夏場の観光客に提供
養殖したカキを味わえる飲食店「かき家みうら」を営む男性(56)は、夏場は海洋深層水に入れておいたカキを提供しており、「しっかり売れるし、お客さんは『おいしい』と喜んでくれる」と話す。
佐渡島への観光客の入り込みは、毎年夏場にピークを迎える。島内の水産物の水揚げ量が少なくなるこの時期に、冬の代表的な味覚であるカキを提供できれば、付加価値も高まり、売り上げ増につながる期待もある。
輸送コストが課題
一方、普及に向けては課題もある。海洋深層水の水槽がある施設から佐渡島の玄関口である両津港までは、車で約50分かかる。輸送や水槽の使用料などのコストが足かせとなっている。このため、島内では昨年、旅館1軒への提供にとどまった。県佐渡地域振興局によると、今後は他の飲食店への展開や輸送網の整備を進める方針という。
同漁協の山本博文組合長(63)は「漁業者の利益になる商品を目指している。観光客が多く訪れる夏場にたくさん提供し、佐渡のおいしいカキをPRしていきたい」と力を込める。



