大阪・関西万博の建設工事を巡り、大手ゼネコン竹中工務店の幹部の男(61)が背任容疑で大阪府警に逮捕された。男は万博の象徴である大屋根リングの建設現場責任者を務めており、社内外で名を知られる存在だった。関係者には動揺と驚きが広がっている。
捜索と会社の対応
19日午前11時頃、竹中工務店の大阪本店(大阪市中央区)に府警捜査員が捜索に入った。約45分後、押収物を積んだとみられる捜査車両が会社を後にした。
同社はホームページで「捜査に全面的に協力し、事実関係を確認した上で会社として厳正に対処する。再発防止に向け、コンプライアンスの徹底に全力で取り組む」とコメントした。
現場責任者の経歴と疑惑
同社関係者によると、男は本社の大阪本店で工事担当の副部長などを歴任。府警によると、万博工事では2023年1月以降、現場責任者の総括作業所長を務め、リングを含む工事を任され、調達や発注を統括する立場だった。
竹中工務店の男性幹部は「責任者への任命は、会社としての期待の表れだった。万博の工事は、会社として歴史的な誇りだったが、背任が事実なら傷が付いてしまう」と話した。中堅の男性社員は「かつては『現場所長になれば家が建つ』と言われるような付き合いもあったと聞くが、時代錯誤も甚だしい」と語った。
水増しの手口と自宅リフォーム
府警によると、男は15~20年前、水増しに関与したとされる下請け業者の代表と仕事を通じて知り合った。水増し分は、奈良市にある自宅のリフォームなどに流用されていたとされる。リフォームは、男が現場責任者に就任した約半年後に始まったという。
複数の近隣住人によると、男の自宅は玄関のタイルや外壁が新調され、洋風だった住宅が和風に変わったという。男が周囲への配慮のために配ったチラシには、施工主として、水増しを担ったとされる下請け業者の名が記されていた。
近くに住む男性(90)は「(男は)最近は地域行事に参加せず、付き合いが良い方ではなかった。バルコニーが大きな家で『さすが竹中の社員だな』と思っていた」と語った。
総額と万博工事の背景
府警によると、男は万博関連の工事で繰り返し水増し請求をした疑いがあり、総額は6000万円以上となる可能性があるという。
男が建設に携わったリングは、全周約2キロ、高さは最大約20メートル。「最大の木造建築物」としてギネスにも認定された。建設は竹中工務店を含むスーパーゼネコン3社が、それぞれ共同企業体(JV)の中心となり、3分割して完成させた。
これらを含む会場の建設費は、国と大阪府・大阪市、経済団体が3分の1ずつ負担した。誘致決定時には1250億円と見込まれていたが、資材高騰などで2350億円に膨らんだ。
知事の見解と専門家の指摘
日本国際博覧会協会(万博協会)の副会長を務める吉村洋文・大阪府知事は19日の記者会見で「こういった事件が起きたことは非常に残念」と述べ、竹中工務店に事実関係の究明や再発防止を求めた。さらに「被害を受けたのも竹中工務店で、(万博協会に)損害が生じているものではない」との見方を示す一方で、「今後、事実関係を注視していきたい」とも述べた。
建設工事の契約に詳しい楠茂樹・筑波大教授(経済法)は「期限が迫り多額の費用が拠出される中、請求額が適正かどうかのチェックが社内で甘くなり、水増ししやすい環境になった可能性がある。竹中工務店は、他にも同様のケースがなかったかや、河井容疑者への権限の集中など構造的な問題の有無について検討し、原因を解明すべきだ」と話した。



