ダイエットに挑戦しても、リバウンドで体重が戻ってしまう経験は多くの人が持つ悩みだ。しかし、魚の世界ではこのリバウンドがむしろ歓迎されるかもしれない。三重県は、マダイの養殖において「補償成長」と呼ばれる現象を活用し、エサの量を減らしながらも成長を維持する新しい養殖法の確立に取り組んでいる。
補償成長とは何か
補償成長とは、生物が一時的な飢餓状態を経験した後、再びエサを与えられた際に通常よりも速い速度で成長する現象を指す。三重県水産研究所は、尾鷲市の大曽根浦漁港に隣接する尾鷲湾に3つのいけすを設置し、それぞれ100匹ずつのマダイを飼育している。一つのいけすには週に3回、3~5キロのエサを与えるが、残りの二つには一定期間エサを与えない。約1カ月後、エサを与えられなかったいけすで給餌を再開すると、痩せたマダイが急激に成長し、約3カ月後には通常の給餌を受けたマダイと同等の大きさに達する。
養殖現場の課題と補償成長の利点
近年、エサの原料となる魚粉の価格高騰が養殖業者の経営を圧迫している。また、漁業者の高齢化や人手不足により、休暇の確保も困難な状況だ。補償成長を活用すれば、給餌回数を減らせるため、エサ代の削減と労働負担の軽減が期待できる。国内では愛媛県や高知県ですでにマダイやブリの養殖でこの手法が導入されているが、三重県内では普及していなかった。
三重県水産研究所の担当者は「補償成長は魚の健康状態に悪影響を与えず、成長率を維持できることが確認されている。実用化に向けて、最適な絶食期間や給餌再開後のエサの量をさらに研究する必要がある」と述べている。
実用化への課題と展望
補償成長の導入には、魚の状態を細かく観察する必要があり、絶食期間中のストレスや死亡率の管理が課題となる。また、魚種やサイズによって効果が異なるため、マダイに適したプロトコルの確立が求められる。三重県は今後、実証実験を重ね、県内の養殖業者への技術移転を目指す。
この取り組みは、持続可能な水産業の実現に貢献する可能性がある。エサ代の高騰が続く中、補償成長はコスト削減と生産性向上の両立を図る有効な手段として注目されている。



