熊本地震から10年。被災地では今も「見えない医療危機」が深刻化している。脳卒中リスクは1.62倍に上昇し、誤嚥性肺炎や熱中症のリスクも高まっている。しかし、熊本には「負けない」理由があるという。
熊本の医療体制は全国平均に近い
熊本県内でも医師の偏在はあるが、医療体制は整っているほうだ。人口10万人あたりの医師数は、宇城2次医療圏が167.4人と少ないものの、八代2次医療圏は247.6人で、全国平均(267.4人)をわずかに下回る。東日本大震災当時の相双地域(120.4人)とは比較にならない。
歴史が生んだ医師の多さ
なぜ熊本、さらに八代に医師が多いのか。そこには歴史的な背景がある。明治政府は1871年、九州の軍事拠点として熊本に鎮西鎮台を置き、のちに熊本鎮台、陸軍第6師団へと改編した。軍都として発展した熊本では、医学も重視され、藩校の医学寮「再春館」の流れをくむ医学校は1929年に官立熊本医科大学となり、戦後の熊本大学医学部へ発展した。
今回の震災では、熊本大学病院や国立病院機構熊本医療センターが多くの患者を受け入れた。八代市にはJCHO熊本総合病院、熊本労災病院がある。熊本の特徴は国公立病院が多いことで、その多くは戦前の陸海軍病院に由来する。国立病院機構熊本医療センターの前身は熊本第一陸軍病院で、軍都だった歴史の遺産といえる。
透析医療の危機
震災に特有の問題もあり、その多くは医療機関の逼迫によって生じる。代表的なのが透析医療の継続だ。透析には大量の水が必要で、断水が長引けば治療の継続が困難になる。2016年の熊本地震では、福島県いわき市の常磐病院が熊本市の上村循環器科医院などに医師や看護師を派遣し、透析医療の継続を支えた。東日本大震災で受けた支援への恩返しだった。
地域力が解決に貢献
筆者は、熊本が培ってきた地域力が、医療危機の解決に大きく貢献すると考えている。今後の課題は、被災を免れた医療機関への支援が重要になる。



