イオンモール熊本で発生した爆発事故を受け、商業施設における「二重の指揮命令」の問題が浮き彫りになっている。テナント従業員は、施設側の指示と自社の防災マニュアルのどちらに従うべきか、混乱が生じているという。
大規模モールは避難しやすい構造だが…
イオンモールやららぽーとなどの大規模郊外型ショッピングモールは、非常口や避難階段が多数設置され、基準階となる1階には通常時は閉鎖されているが非常時に開放できる出入口が複数ある。周囲には数千台規模の平面駐車場があり、避難者の一時待機スペースの確保も容易だ。つまり、有事の際には「避難しやすい構造」と言える。
一方、都心の駅ビルや百貨店など多層階の建物は、古い物件も多く、防災基準を満たしていても実際の災害時にどこまで機能するか疑問が残る。消防が定める基準は「最低限の要件」であり、100%の安全を保証するものではない。
自社マニュアルに従い危険を顧みず行動した従業員も
今回の事故では、ある飲食店従業員が二次災害を防ぐため、自社の防災マニュアルに基づき、自店に戻ってガスの止栓や電源ブレーカーをオフにする作業を行ったことが報じられた。
この行動には賛否あるが、あるテナント関係者は「自社の防災マニュアルには『避難する際には厨房内のガスの止栓、主幹電源をオフにする』と明記している」と説明。自社が商業施設だけでなく路面店や駅ビル、オフィスビルなどさまざまな立地で営業している以上、二次災害を防ぐ意味で当然の措置だという。
客と従業員の生命を守るという基本スタンスは同じ
施設側とテナント側の指揮命令系統が異なる中で、基本スタンスは「客と従業員の生命を守る」ことで一致している。しかし、実際の緊急時にはどちらの指示を優先すべきか、明確なルールが整備されていないのが現状だ。今回の事故を機に、業界全体で防災マニュアルの統一や連携強化が求められそうだ。



