大阪で保護の「シカやん」奈良から来たとDNA鑑定で判明、長距離移動の背景にシカ急増
大阪保護のシカやん、奈良からDNA鑑定で判明 シカ急増が背景

大阪市内で迷い込み、今年3月に保護されたニホンジカの愛称「シカやん」について、神戸女学院大学などの研究チームが実施したDNA調査の結果、奈良公園(奈良市)を中心とする地域に生息するシカと遺伝子型が完全に一致したことが明らかになった。これにより、シカやんが奈良から来たことが科学的に裏付けられた。長距離移動の背景には、奈良公園内のシカの個体数急増があるとみられる。

DNA分析で奈良のシカと一致

調査は読売新聞の依頼で、シカのDNA分析に実績のある神戸女学院大学の高木俊人専任講師(分子生態学)らが実施。5月に高木氏がシカやんを保護している大阪府能勢町の宿泊施設「能勢温泉」を訪れ、フンを採取した。

奈良、和歌山、三重、京都の4府県に生息するシカは18の遺伝子型に分類される。分析の結果、シカやんの遺伝子型は奈良公園およびその周辺に生息する集団のものと一致。この集団は1000年以上にわたって独自性を保ってきたことが分かっている。

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奈良公園のシカ急増が背景か

国の天然記念物に指定されている奈良公園の野生シカは近年、生息数が急増している。一般財団法人「奈良の鹿愛護会」は7月16日、今年の頭数が昨年より222頭増加し、過去最多の1687頭に達したと発表した。観光客による過剰な餌やりが原因の可能性が指摘されている。

シカやんが捕獲された大阪市内の地点と奈良公園との直線距離は約25キロ。調査に参加した奈良大学の立沢史郎教授(保全生態学)によると、シカやんのような若い雄は繁殖相手を求めて長距離を移動する習性があるが、数十キロ移動するケースは珍しいという。

第2、第3のシカやん出現の可能性

奈良公園の東側では、三重や京都の山間部に向かう雄のシカも確認されている。立沢教授は「このまま奈良公園のシカが増加すれば、第2、第3のシカやんが出る可能性がある」と警鐘を鳴らす。

チームは近く、科学技術振興機構が運営する査読前論文投稿サイト「Jxiv」で調査結果を公表する予定。

保護地区外のシカは駆除対象に

奈良のシカは古くから「神の使い」として保護されてきた。文化庁によると、天然記念物としての指定地域は明確ではないが、奈良県は奈良公園を中心に「保護地区」を設け、病気やけがをしたシカの治療や交通事故対策を進めている。

保護地区から離れたシカについては、平成の大合併以前の旧奈良市域を「管理地区」に指定し、食害による農林業被害防止のため捕獲などを行っている。管理地区の外に出たシカは、野生のクマやイノシシと同様、鳥獣保護管理法に基づき各府県が捕獲や駆除を判断する対象となる。

奈良県の担当者は「大切な文化財ではあるが、現時点では、見つかった所在地のルールに従って、どうするかを判断してもらうしかない」と話す。大阪府の担当者は「奈良のシカが大阪まで来たと確認されたケースはこれまでなかった。奈良では天然記念物として保護されている側面もあり、奈良県と情報共有して対応していきたい」と述べた。

共同管理体制の必要性

調査を行った高木専任講師は「奈良県と近隣府県がシカを共同管理するルール作りが必要だ」と指摘している。

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