スーパーのセルフレジで買い物をしていたところ、2人の店員が配置され、そのうちの1人が背後に立って手元をじっと見ていた。いわゆる「見張りチェック」をされていたのだ。あまりいい気分ではなかったが、店側の事情を思えば仕方ない。現在、セルフレジでの万引きが大きな社会問題となっているからだ。
6月16日放送の『クローズアップ現代』(NHK)によると、静岡県で10店舗以上を展開するスーパーが3年前にセルフレジを導入したところ、万引き件数がなんと4倍に増加。被害額は年間500万円に上ったという。この事態を招いた要因となったのが、商品を読み取らずにバッグに入れる「セルフレジでの万引き」だ。この犯罪行為の悪質なところは、万引きGメンに声をかけられても「あれ?スキャンし忘れちゃったよ」などと言い訳ができてしまうことだ。
こうした構造的な問題もあって、このスーパーでは新しくオープンする店舗ではセルフレジを導入しないことに決めたという。多額の設備投資をしたにもかかわらず万引き被害が増え、監視スタッフまで確保する必要があり、有人レジのほうがメリットが大きいと判断した。
海外でも同様の問題が深刻化
ただ、このような問題が起きることはある程度予想されていた。日本より早くセルフレジが普及した米国でも同様の問題が深刻化し、なんと被害額が年間7兆4000億円にも上って、有人レジに切り替える動きが広がっているからだ。ディスカウントストア大手のダラー・ゼネラルでは、約2万店のうち1万2000店でセルフレジを撤去した。
「客は適切に精算し、不正をしない」という前提で普及が進んだセルフレジだが、実はそのような「性善説に基づくシステム」は、いざ運用してみてもうまく機能せず、かえって事態を悪化させるケースが少なくない。
リモートワークにも共通する問題
分かりやすい例は「リモートワーク」である。リモートワーク中に「サボったことがある」人の割合は、調査によって一定数存在することが示されている。自己責任に任せた勤務形態は、生産性の低下や不公平感を生む原因となる。
性善説を前提としたシステムは、人間の行動を過度に楽観視し、監視や抑止の仕組みを軽視する傾向がある。その結果、悪用されるリスクが高まり、本来の目的を達成できないどころか、新たな問題を引き起こすことになる。



