お盆が過ぎると、世間の慌ただしさが徐々に収まっていく。ノンフィクション作家の久田恵さんは、東京の高齢者ホームの一室で、亡き父母の写真を見つめながら、静かに両親をしのんでいる。
父の終活と遺された位牌
久田さんの父方は、愛知県の寺の僧侶だったが、父自身は会社員として転勤族の道を歩んだ。自立を好み、母が倒れてからは自ら台所に立ち、手際よく料理を作る姿があったという。塩を目分量で入れようとする久田さんに「何グラムなのかを正確にはかれ!」と几帳面さを見せた父の言動を、今は懐かしく思い出すという。
父は生前、自らの戒名の手続きはもちろん、孫の遺骨も納められる代々の墓を愛知の寺に用意し、位牌に戒名を刻むように言い残した。「身近な位牌に手を合わせていればいいんだよ」と言わんばかりに、供養の段取りまで完璧に整えていた。娘の性格を熟知していた父ならではの親心だったのだろう。
東京での静かな供養
年齢を重ねた久田さんにとって、愛知の寺まで1人で墓参りするのは難しい。今年のお盆は、兄や姉が墓を守ってくれていることに感謝しながら、東京で静かに位牌に手を合わせたという。
9月には秋のお彼岸を迎える。墓参りはできないけれど、父の写真を見つめていると、「それでいいんだよ」と父が理解を示してくれている気がする毎日だと、久田さんは綴っている。



