「黒い雨」主人公モデルの娘婿、90歳が語る原爆の悲惨さ
「黒い雨」モデルの娘婿90歳、原爆の悲惨さ語る

広島県神石高原町で4日、原爆をテーマにした井伏鱒二の小説「黒い雨」の舞台の一つとして知られる町で、国内外から約8000人の青少年らが集う教育キャンプ大会が始まった。参加者の一部は、小説ゆかりの地を巡る。

小説を紹介する町内の資料館の館長、重松文宏さん(90)は「平和の尊さを考える機会に」と語る。重松さんは、小説の主人公のモデルとなった義父、重松静馬さん(1980年に77歳で死去)の被爆体験を継承している。

義父の被爆体験と小説化の経緯

静馬さんは広島市の爆心地から約2キロで被爆し、顔などにやけどを負ったが一命を取り留め、ふるさとに戻った。文学に関心を持ち、戦後、出身地の福山市に帰省していた井伏を訪ねて意気投合。創作用の資料を提供するなどして親交を深めた。

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1962年頃、書きためた被爆体験記を井伏に送り小説化を提案。井伏は「被爆者のあなた自身が書くべきだ」と躊躇したが、65年に雑誌で「姪の結婚」の題で連載を始め、「黒い雨」に改題して単行本化された。主人公の名は「閑間重松」。原爆の惨状や放射線被害の深刻さを描いた作品として国内外で広く読まれ、井伏の代表作となった。

静馬さんの思いとキャンプ大会

静馬さんは娘婿の文宏さんにも、道が大量の遺体で埋まった惨状や、水を求める女の子を置いてその場を離れた後悔などをよく語った。被爆体験記は「子や孫のために」と書き記したが、反戦・反核への思いがより広がるようにと井伏に小説化を託したという。

町内では4日、ボーイスカウト日本連盟が4年に1度行う「日本スカウトジャンボリー」が10日までの日程で始まった。作中で主人公の閑間重松が原爆症のめいの回復を願って訪れた池や、小説の一節を刻んだ文学碑などゆかりの地を巡るツアーには、5~9日に延べ約640人が参加する予定だ。参加者らは資料館にも立ち寄る。

連盟は「参加者が学びを持ち帰り、日々の活動に還元してほしい」とする。文宏さんは「『黒い雨』の舞台となった地で原爆の悲惨さをたくさんの人に知ってほしい」と話した。

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